少々大げさに表現するならば、ローマ・カトリック教会の法王選出会(コンクラーベ)の動向に心を奪われている間に世界は大きく動いていた。朝鮮半島では北朝鮮の金正恩第1書記の戦争勃発へ威嚇が更にエスカレートし、キプロスでは預金課税問題を契機とした国内で混乱、中東・北アフリカの政情不安、そして当方が担当するウィーンの国連機関では人事問題、イランの核問題などが重要な段階を迎えてきた。

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▲UNIDOの次期事務局長に立候補した李勇・中国財政部副部長

焦るような思いが沸くが、可能な限り、欧州を舞台とした政治情勢、北朝鮮情報を読者の皆さんにお伝えしていきたいと思っている。

 前口上はこれまでにして、今回はウィーンに本部を置く国連工業開発機関(UNIDO)の次期事務局長選の動きを紹介する。3月現在で4人が立候補を届けている。その中で注目されるのは中国が李勇(Li Yong)財務部副部長(財務次官)を擁立し、必勝を期していることだ。

 UNIDOは国際原子力機関(IAEA)ほどメデイアの関心を引かないが、それゆえに、というべきかどうかしらないが、中国がUNIDOの乗っ取りに本腰を挙げてきたのだ。
 UNIDOではカンデ・ユムケラー現事務局長が今年、ウィーンに新設される「持続的エネルギー専門機関」のトップに就任するため、6月24日に開催される第41回工業開発理事会(IDB)で次期事務局長が選出され、その直後、招集される特別総会で新しい体制が正式決定される運びだ。
 地域ローテーションでは新事務局長はアジア地域から選出することになっているが、「明記された原則ではないので断言はできない」(在ウィーン国際機関日本政府代表部)という。ポーランドのコロレツ環境相の他、イタリアとカンボジアが早々と候補者を擁立したが、中国が2月9日、李勇財務部副部長という大物を担ぎ出してきた。

 UNIDOは国連の専門機関の中でも腐敗、不正、縁故主義などが席巻し、存続が問われ続けてきた機関だ。米国は1996年、UNIDOを脱退したのを皮切りに、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージランドなどが次々と脱退していくなか、中国はUNIDOをアフリカなど開発途上国への支援拠点に利用する一方、欧州連合(EU)の窓口にも利用できると計算しているという。UNIDO最大分担金(約19%、約1299万ユーロ)を担う日本が消極的な活動に終始しているのをいいことにして、中国はアジアの大国としてその力をフルに行使してきたのだ。メディアには余り知られていないが、UNIDO職員の中には中国共産党政治局員の親族がいる、といった具合だ。

 李勇財政部副部長(62)は2003年以来、中国財政分野の主要人物。中国人民銀行通貨政策委員会のメンバー、国際金融危機対策国家タスク・フォースの一員でもある。
 UNIDO関係者は「李勇副部長の当落は最大分担国の日本が握っている。日本が支持を表明すれば、当選は確実だ。反対するば、中国側も苦戦を余儀なくされるだろう。だから、北京と東京の間でなんらかの交渉が行われているはずだ」と予想している。

 なお、4月には候補者がウィーン入りして、その立候補声明の意図などを加盟国に説明する予定だ。