「オランダ政府は国連工業開発機関(UNIDO)から脱退する意向だ。脱退問題は目下、議会で議題に挙げられている。上下院で審議され、今年下半期には脱退が正式に決定する予定だ」

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▲ウィーンの国連機関正面入口、左側は国際原子力機関(IAEA)本部、右側はUNIDO本部(2012年12月撮影)

 駐ウィーン国際機関オランダ政府代表部UNIDO担当官は電話で当方にこのように答えた。脱退の理由は明確だ。「年間300万ユーロを払い続ける価値がないからだ」という。欧州諸国はどの国も出費の節約を強いられている。分担金だけ払い、国益とならない機関からは脱退するというわけだ。

 UNIDO(本部ウィーン)では昨年、ニュージランドが今年末に脱退する旨を通達済みだ。これで米国、カナダ、オーストラリア、英国、そしてニュージーランドと英語圏は次々とUNIDOを脱退していく。そして次はオランダというわけだ。国連の専門機関で加盟国が次々と脱退していく機関はUNIDO以外にはない。

 英国が2011年、「UNIDOは国連の専門機関としては最悪の状況だ」と表明した時、UNIDOのカンデ・ユムケラー事務局長は「UNIDOの実態が正しく伝えられていない。失望した」と嘆いた(同事務局長がいう「UNIDOの実態」とは何かを一度、じっくりと聞いてみたいものだ)。

 米国は1996年、UNIDOの腐敗体質を批判して脱退した。当時、「米国の国連蔑視政策だ」と批判的に受け取られたが、ここにきて「米国の判断は正しかった」と見直されてきた。UNIDOの腐敗体質は今、始まったわけではない。UNIDOには縁故関係で雇用された数多くの自称コンサルタントがいる。彼らは週、数時間、事務所に顔を出すだけで数千ユーロの月給を受け取る。誰もそのコンサルタントを管理していない。その上、コンサルタントといっても専門知識や経験を有さない者も多い。中東加盟国のある大使は失業中の息子をUNIDOに送り込んでいる、といった類の話は少なくない。だから、欧米の加盟国がUNIDOに対して懐疑的、批判的とならざるを得ないわけだ。ウィーン外交筋は「UNID
Oは結局、ロシアと中国が牛耳っている」と見ているほどだ。

 ウィーンの国連関係者の間で「Xデー」が囁かれている、ドイツがUNIDOから脱退を表明する日だ。ドイツ外交官は「わが国の政府もUNIDOの運営には不満足だ。ミスマネージメント、腐敗から人材の質まで全てが問題だが、現時点では脱退を考えていない」という。その主因は「ドイツが国連安保理の常任国入りを願っている、国連の専門機関から脱退すれば、開発途上国から批判を受けることは必至だ。大国・ドイツのイメージにもマイナスだ」という計算があるからだ。

 それでは同じように、常任理事国入りを願う日本はどうだろうか。UNIDO最大分担金(約19%、約1299万ユーロ)を担う日本は脱退を全く考えていない。UNIDOをアフリカ支援の受入れ機関として活用できると信じているからだ。
 それでは、最大分担金を支払う国として、UNIDOの腐敗体質を是正し、必要なアドバイスを提供するなど、主導的な役割を果たしているか、というとそのような活動はまったく見られない。「金は払うが、口は出さない」という従来通りの消極的姿勢だ。そのため、UNIDO幹部たちからは「日本が分担金を払い続ける限り、UNIDOは安泰だ」と楽観視されているほどだ。