独ケルン市で先月、強姦された女性が妊娠を恐れ、堕胎ピル(Pille danach)を要求したところ、カトリック系病院が拒否した。そのため女性は堕胎処置をしてくれる病院を探し、最終的にはプロテスタント系病院に受け入れられたという。
 この件が報じられると、国内のカトリック系病院に対し、「強姦された女性が妊娠を恐れ、堕胎ピルを要求したのに、それを非情にも拒否するとは考えられないことだ」といった批判の声が高まってきた。キリスト教民主同盟(CDU)、社会民主党(SPD)や「緑の党」議員たちから、「緊急医から送られてきた患者を追っ払う病院はもはや病院ではない」という批判から、「カトリック系病院の業務を停止させるべきだ」といった過激な声まで聞かれる。

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▲キリスト教倫理と医療現場の間で苦悩するカトリック系病院(2013年1月22日、バチカン放送独語電子版から)

 バチカン放送(独語電子版)によると、国内の反響を深刻に受け止めた独カトリック系病院同盟(KKVD)のトマス・ヴォルトカンプ会長は「ケルンの場合、困窮下の患者を受け入れなかったという点で間違いを犯したが、カトリック系病院全体の存在に疑問を呈したり、批判することは受け入れられない」と反論し、「法に基づき、カトリック系病院は患者の一定の要望に対して拒否できる権利を有する」と述べた。具体的には、中絶、堕胎、安楽死などがそれに該当するだろう。
 同会長は「カトリック系病院はキリスト教倫理と患者の期待との間で常に苦悩してきた。全ての要望を受け入れるか、全てを拒否するか、難しい選択に遭遇している。明確な点は一病院が単独で決定できる問題ではないことだ」と語った。
 なお、ドイツには435のカトリック系病院があり、約9万8000のベットに約16万5000人が働いている。ドイツ全土では、約5病院に1病院はカトリック系病院だ。

 ちなみに、ドイツで今年から医者の処方箋なしでも、オンラインで堕胎ピルを購入できる道が開かれたばかりだ。それに対し、独カトリック教会司教会議は「生命を殺すことはキリスト教の倫理に反する」と強調し、堕胎ピルのオンライン販売を強く批判している。 

 蛇足だが、日本の新聞を読んでいると、敬虔なカトリック教信者の麻生太郎副総理兼財務相が21日、社会保障制度改革国民会議で終末期医療について、「生きられるからといって延命措置をされたら堪らない。さっさと死ねるようにしてほしい」(日本経済新聞)と述べたという。カトリック教徒の麻生財務相もご存知と思うが、バチカン法王庁は安楽死には強く反対し、「さっさと死ぬ」ことも許していない。