ウィーンに本部を置く国連工業開発機関(UNIDO)が北朝鮮に化学兵器(神経ガス)製造可能な機材を供給していたことが明らかになったが、UNIDOのカンデ・ユムケラー事務局長は先月11日、職員宛に付属書類を含む5頁の内部用メモランダム(Interoffice Memorandum)を送り、国連安保理決議で制裁対象リストに挙げられている加盟国(北朝鮮を含む12カ国)への支援プロジェクト履行の際、制裁違反とならないかを慎重に検証して実施するように異例の注意を喚起していたことが判明した。

▲制裁対象国への対応で注意を喚起するユムケラー事務局長のメモランダム(2013年1月21日、撮影)
国連関係者は「事務局長が職員に向かって制裁対象国への対応で注意を喚起することは珍しい」と指摘、UNIDOが北に化学兵器製造可能な機材などを提供したという日本メデイアの報道内容を深刻に受け取り、対応に乗り出さざるを得なくなったからだ、と一般的に受け取られている。ユムケラー事務局長は「制裁違反かどうか不明な場合、安保理制裁委員会に書簡を送り、確認を取るべきだ」と指摘している。
UNIDOのモントリオール・プロジェクト(MP)に精通する独化学者は、「事務局長の発言はUNIDOが対北安保理決議(1718)の違反事実を認めたわけだが、制裁を蹂躙した関係者への処罰は何も行われていない」と指摘、MP担当者の管理責任を明確にするよう要求している。同化学者によれば、ニューヨークの対北安保理制裁委員会関係者はUNIDOの対北MPの詳細な情報の収集に乗り出してきている。UNIDOの対北MPは2003年に開始され、08年に完了した。
北は4塩化炭素(CTC)がモントリオール議定書締結国の規制物質となっているためその代替農薬生産のためUNIDOに支援を要請。それを受け、UNIDOは07年4月、CTCに代わる別の3種の殺虫剤を小規模生産できる関連機材購入のため入札を実施した。そして受注を獲得したエジプトの化学製造会社「Star Speciality Chemicals」が08年8月、有機リンとオキサゾール誘導体を製造できるリアクトルを北に輸出した。有機リンはサリン、タブン、ソマン、VX神経ガスと同一の化学グループに属する。北が入手した化学用反応器はカズサホス(Cadusafos)12トン、土壌殺菌剤ハイメキサゾール(Hymexazol)20トン、クロルピリホスメチル(Chlorpyrifos Methyl)16トンを年間製造できる能力を有する。UNIDOのMP関係者は、北が化学兵器製造用に利用する可能性を薄々知りながら、機材を支援した疑いがもたれている。
UNIDOは安保理決議(1718)に違反して北に化学兵器製造可能な機材を供給したことが判明した後も、「そのような事実はない。全てのプロジェクトは詳細な検証のもとに実施されてきた」(UNIDO has not provided any materials to the DPRK in violation of the corresponding UN Security Council Resolution)と反論し、報道内容を否定してきた。在ウィーン国際機関の日本政府代表部関係者も「UNIDO関係者に確認したが、北に化学兵器製造可能な機材を供給した事実はないとの返答を得た」と述べるだけで独自の調査を怠ってきた。UNIDOの最大分担金拠出国の日本側の消極的な対応と危機管理に批判の声も出ている。
当方は過去2回、このコラム欄でUNIDOの安保理決議違反を紹介した(「北が化学兵器を製造できる理由」2012年11月29日、「危険な『入札書』」2012年12月10日参照)。2回目は関連の国連文書も提示した。

▲制裁対象国への対応で注意を喚起するユムケラー事務局長のメモランダム(2013年1月21日、撮影)
国連関係者は「事務局長が職員に向かって制裁対象国への対応で注意を喚起することは珍しい」と指摘、UNIDOが北に化学兵器製造可能な機材などを提供したという日本メデイアの報道内容を深刻に受け取り、対応に乗り出さざるを得なくなったからだ、と一般的に受け取られている。ユムケラー事務局長は「制裁違反かどうか不明な場合、安保理制裁委員会に書簡を送り、確認を取るべきだ」と指摘している。
UNIDOのモントリオール・プロジェクト(MP)に精通する独化学者は、「事務局長の発言はUNIDOが対北安保理決議(1718)の違反事実を認めたわけだが、制裁を蹂躙した関係者への処罰は何も行われていない」と指摘、MP担当者の管理責任を明確にするよう要求している。同化学者によれば、ニューヨークの対北安保理制裁委員会関係者はUNIDOの対北MPの詳細な情報の収集に乗り出してきている。UNIDOの対北MPは2003年に開始され、08年に完了した。
北は4塩化炭素(CTC)がモントリオール議定書締結国の規制物質となっているためその代替農薬生産のためUNIDOに支援を要請。それを受け、UNIDOは07年4月、CTCに代わる別の3種の殺虫剤を小規模生産できる関連機材購入のため入札を実施した。そして受注を獲得したエジプトの化学製造会社「Star Speciality Chemicals」が08年8月、有機リンとオキサゾール誘導体を製造できるリアクトルを北に輸出した。有機リンはサリン、タブン、ソマン、VX神経ガスと同一の化学グループに属する。北が入手した化学用反応器はカズサホス(Cadusafos)12トン、土壌殺菌剤ハイメキサゾール(Hymexazol)20トン、クロルピリホスメチル(Chlorpyrifos Methyl)16トンを年間製造できる能力を有する。UNIDOのMP関係者は、北が化学兵器製造用に利用する可能性を薄々知りながら、機材を支援した疑いがもたれている。
UNIDOは安保理決議(1718)に違反して北に化学兵器製造可能な機材を供給したことが判明した後も、「そのような事実はない。全てのプロジェクトは詳細な検証のもとに実施されてきた」(UNIDO has not provided any materials to the DPRK in violation of the corresponding UN Security Council Resolution)と反論し、報道内容を否定してきた。在ウィーン国際機関の日本政府代表部関係者も「UNIDO関係者に確認したが、北に化学兵器製造可能な機材を供給した事実はないとの返答を得た」と述べるだけで独自の調査を怠ってきた。UNIDOの最大分担金拠出国の日本側の消極的な対応と危機管理に批判の声も出ている。
当方は過去2回、このコラム欄でUNIDOの安保理決議違反を紹介した(「北が化学兵器を製造できる理由」2012年11月29日、「危険な『入札書』」2012年12月10日参照)。2回目は関連の国連文書も提示した。
