オーストリアで20日、徴兵制の存続を問う国民投票が実施され、大方の予想通り、徴兵制維持派が約59・8%と過半数を獲得し、職業軍の導入案は約40・2%に留まった。ファイマン政権は国民投票の結果を尊重し、徴兵制を今後も堅持していくことになる。投票率は国民投票としては異例の約49%と高かった。

▲徴兵制の維持を決定したオーストリア(オーストリア国防省提供)
今回の国民投票は、ファイマン連立政権の社会民主党と国民党の両与党が立場を異にしていたため、投票前から今秋の国民議会選挙の前哨戦と受け取られ、両党を中心として激しい党主導のキャンペーンが展開された。
投票結果の年齢別分析によると、16歳から29歳の有権者の約63%が徴兵制の廃止、職業軍の導入を支持し、60歳以上は現徴兵制維持が60%以上越えた。徴兵年齢に当たる若者たちが6ヶ月間の現徴兵(シビル・サービス9ヶ月)の廃止を願い、職業軍導入を支持したのは当然の結果かもしれない。一方、高齢者の有権者の多くは、現徴兵制が廃止されれば、自然災害や社会看護ケアで奉仕活動するシビル・サービスも廃止されると考え、徴兵制の維持を支持したという。
有権者(約640万人)が自身の直接の利害関係から投票するのは当然だが、徴兵制の是非を問う国民投票で、「国防を今後どうするか」という議論は政党や国民の間から余り聞かれなかった。
欧州が東西両陣営に分裂した冷戦時代、徴兵制は欧州のどの国でも国防の中核的な制度だった。しかし、冷戦時代が終わり、治安を直接脅かす国がなくなると、徴兵制は次第に廃止され、職業軍を導入する国が増えてきた。欧州連合(EU)27カ国中、21カ国が既に徴兵制を廃止し、職業軍を導入している(例外・旧ソ連の軍事的脅威にさらされてきた歴史をもつフィンランドやエストニアでは徴兵制が依然実施されている)。
その点からみると、オーストリアの国民投票結果は欧州のトレンドに反する。その背景には、徴兵制維持を主張してきた国民党の「徴兵制が廃止され、職業軍が導入されれば、わが国の中立主義は消滅する」とか、「徴兵制の廃止は即、シビル・サービスの廃止を意味する。自然災害対策や高齢者のケアなどが難しくなる」といった主張が功を奏したことになる。それに対し、職業軍導入派の社民党は「国民党の主張は事実ではない。過去の自然災害で動員されたシビル・サービスの奉仕者は少数に過ぎない」と反論し、「国民党は有権者の不安を煽るキャンペーンを展開してきた」と指摘している(社民党の牙城、ウィーン市だけは職業軍導入派が過半数約54・2%を獲得した)。
徴兵制の存続を問う国民投票は終わったが、「冷戦後の国防をどのように実施していくか」についての真摯な議論は今後の課題として残されたわけだ。

▲徴兵制の維持を決定したオーストリア(オーストリア国防省提供)
今回の国民投票は、ファイマン連立政権の社会民主党と国民党の両与党が立場を異にしていたため、投票前から今秋の国民議会選挙の前哨戦と受け取られ、両党を中心として激しい党主導のキャンペーンが展開された。
投票結果の年齢別分析によると、16歳から29歳の有権者の約63%が徴兵制の廃止、職業軍の導入を支持し、60歳以上は現徴兵制維持が60%以上越えた。徴兵年齢に当たる若者たちが6ヶ月間の現徴兵(シビル・サービス9ヶ月)の廃止を願い、職業軍導入を支持したのは当然の結果かもしれない。一方、高齢者の有権者の多くは、現徴兵制が廃止されれば、自然災害や社会看護ケアで奉仕活動するシビル・サービスも廃止されると考え、徴兵制の維持を支持したという。
有権者(約640万人)が自身の直接の利害関係から投票するのは当然だが、徴兵制の是非を問う国民投票で、「国防を今後どうするか」という議論は政党や国民の間から余り聞かれなかった。
欧州が東西両陣営に分裂した冷戦時代、徴兵制は欧州のどの国でも国防の中核的な制度だった。しかし、冷戦時代が終わり、治安を直接脅かす国がなくなると、徴兵制は次第に廃止され、職業軍を導入する国が増えてきた。欧州連合(EU)27カ国中、21カ国が既に徴兵制を廃止し、職業軍を導入している(例外・旧ソ連の軍事的脅威にさらされてきた歴史をもつフィンランドやエストニアでは徴兵制が依然実施されている)。
その点からみると、オーストリアの国民投票結果は欧州のトレンドに反する。その背景には、徴兵制維持を主張してきた国民党の「徴兵制が廃止され、職業軍が導入されれば、わが国の中立主義は消滅する」とか、「徴兵制の廃止は即、シビル・サービスの廃止を意味する。自然災害対策や高齢者のケアなどが難しくなる」といった主張が功を奏したことになる。それに対し、職業軍導入派の社民党は「国民党の主張は事実ではない。過去の自然災害で動員されたシビル・サービスの奉仕者は少数に過ぎない」と反論し、「国民党は有権者の不安を煽るキャンペーンを展開してきた」と指摘している(社民党の牙城、ウィーン市だけは職業軍導入派が過半数約54・2%を獲得した)。
徴兵制の存続を問う国民投票は終わったが、「冷戦後の国防をどのように実施していくか」についての真摯な議論は今後の課題として残されたわけだ。
