オーストリア国営放送によると、「ロシアでは目下、極寒が覆い、シベリアではマイナス57度、首都モスクワでも零下27度」という。ロシア全土が震え上がっているのだ。ロシア政府は6歳以下の子供がいる家庭に対して「子供を外に出さないように」と注意を喚起する一方、自動車の使用にも警告を発している。郊外で運転中、エンジンが止まり、運転手が車の中で凍え死んでしまうケースが発生しているからだ(同じ日、ウィーンでは雪も降らないクリスマスを迎えた。日中は気温がプラスまで跳ね上がった)。

 モスクワからの情報によれば、この極寒を乗り越えるため、多くの市民はウォッカを飲むという。飲めば体は温まり、いい気分となり、ついつい眠ってしまう。そうして外で凍死する市民も出てきているという。

 話は飛ぶ。当方は昔、ウォッカとロシアの政治家についてコラムを書いたことがある。以下、少し紹介する。

 「レオ二ード・ブレジネフ氏が82年11月に亡くなると、後任のユーリ・アンドロポフ氏が就任したが、84年2月に急死。その後継者のコンスタンティン・チェルネンコ氏も任期1年余りで85年3月に死亡した。日本の政界を想起させるように、指導者が1年毎に変わる時代が続いた。だから、ミハイル・ゴルバチョフ氏が登場した時、国内では『やっと健康な政治家が登場した』と歓迎の声が強かった。厳密に言えば、ウォッカを飲み過ぎず、政務が履行できる政治家の登場を願っていたのだ。しかし、ソ連邦が解体し、ロシア共和国最初の大統領にボリス・エリツィン氏が登場すると、同氏も昔のソ連政治家と同様、ウォッカの飲み過ぎもあって心臓に爆弾を抱えながら激務をこなす、という状況だった。同氏は公式訪問予定のホスト国に到着しながら、飛行機の中で泥酔していた、というエピソードの持ち主だ。ウォッカを制する者はロシアの政治を制する。プーチン大統領は柔道家らしく規律と自制を重視する。ロシア政治家の間では健康に配慮する珍しいタイプだ。ウォッカを自制できるプーチン氏が国際社会の人権蹂躙批判ぐらいで政権を放棄することは、少なくともロシアでは考えられないことだ」

 当方はこれまで、ウォッカで身を持ち崩すロシア政治家の話を聞く度、「情けない」と少々批判的だったが、今回、零下57度のシベリアの人々やモスクワ市民の姿をみて、「ウォッカはロシア民族にとって寒い冬を生き延びていく上で欠かせられないのだろう」と考え直している。もちろん、当方はウォッカを賛美する気持ちは毛頭ないが、零下30度、40度の中で生きている人々にはウォッカは助けとなる、という「ウォッカの効用」を再認識した、という意味でだ。
 参考までに、レストランではウォッカを冷蔵庫ではなく、冷凍庫で保存する。ウォッカは凍らないのだ。