オーストリアで来年1月20日、現徴兵制の堅持か、職業軍の創設かを問う国民投票が実施される。この問題では、社会民主党と国民党の2大政党から成る同国の大連立政権は真っ二つに意見が分かれている。社民党は職業軍隊を支持し、国民党は現徴兵制の維持、といった具合だ。同国の複数の世論調査によると、徴兵制の維持が現時点では多数の支持を得ている。

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▲徴兵制を問う国民投票を実施する国防軍(オーストリア国防省提供)

 ファイマン首相、ダラボス国防相ら社民党関係者は国民に職業軍の必要性を訴え、世論の啓蒙に勤めている。ダラボス国防相は「緊急時発生時には徴兵制の軍隊では対応できない。兵器体系も近代化し、それらを使いこなすためにも職業軍が必要だ」と主張する。一方、国民党は「冷戦後、大戦争が勃発する危険性は限りなく少ない。その一方、自然災害は頻繁に発生している。徴兵制が廃止されれば、徴兵の代替義務に従事してきた若者たち(Zivildienst)の確保が難しくなり、社会福祉関係施設や災害対策で人材を確保することが困難になる」と強調する。

 隣国のドイツは昨年、徴兵制を中止することを決定し、連邦軍の再編(約25万人の兵力を18万5000人に減少する一方、軍拠点の縮小など)に乗り出している。ただし、平時の徴兵制を廃止するだけで、戦争発生時には徴兵制を再導入するシナリオは排除されていない。
 欧州27カ国の内、オーストリアと同様、徴兵制を堅持している国は6カ国に過ぎない。残りの21カ国は徴兵制を廃止し、職業軍を保有している。最近ではドイツの他、スウェーデンが2010年に徴兵制を廃止(中止)している、といった具合だ。すなわち、欧州のトレンドは徴兵制の廃止、職業軍隊の確立に向かっているといえるだろう。

 例えば、徴兵制を維持しているフィンランドやエストニアなど北欧では冷戦終了後もロシアを依然、潜在的脅威と受け取られ、徴兵制が維持されている。

オーストリアでは来年初めに実施される徴兵制を問う国民投票の結果は同年秋に行われる総選挙にも少なからず影響を与えるだろうと受け取られている。それだけに、社民党と国民党の啓蒙活動は今後1ヶ月間、過熱化していくことが必至だろう。