先月31日、スイスのジュネーブ国連で開催された国連人権理事会の「普遍的・定期的審査」(UPR)作業部会の日本人権セッションを取材してきた。日本の第2回UPR協議の内容は報道済みだから省略する。ここでは同UPRの日本人権セッションに合わせて開催されたサイド・イベント「日本の宗教差別」に参加したのでその内容を紹介する。

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▲「日本第2回UPR」の会議場(2012年10月31日、撮影)

 ジュネーブの国連内で開かれたサイド・イベントは「天宙平和連合」(UPF)が主催し、国際人権グループ「国境なき人権」(HRPW)、「全国拉致監禁・強制改宗被害者の会」が後援となっている。そこで当方は、12年5カ月間拉致監禁された経験のある統一教会信者、後藤徹(49)さんと初めて出合った。

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▲12年5カ月間、拉致監禁された後藤徹氏(国連内のサイド・イベントで 2012年10月31日 撮影)

 学生時代、バトミントン選手だった後藤氏は180センチ超える長身だ。その後藤氏は「自分は1995年帰郷した後、ワゴン車で拉致され、アパートの一室で12年間以上、監禁された。当時31歳だった自分は監禁から脱出した時、44歳になっていた。自分は人生で最も貴重な30代を外の世界を見ることなく生きてきた」と述懐した。
 「男が最も活躍できる30代を失った」と語る同氏の声には抑えきれない怒りが滲んでいた。「拉致監禁は犯罪です。統一教会信者という理由だけで1人の人生を破壊できる権利は誰にもないはずですからね」という。

 同イベントでは、「国際ヘルシンキ人権連合」元事務総長のアーロン・ローズ氏、「国境なき人権」(HRFW)のウィリー・フォートレ代表とフランス人弁護士のパトリシア・デュバル氏の3人の国際人権活動家たちが意見を述べた。HRFWのフォートレ代表はは「日本の統一教会信者の拉致監禁問題について初めて聞いた時、信じられなかったが、実際、日本に行って調査して事実だと分かった」と述べた。同代表がまとめた報告書は日本人権セッションの基本文書の一つとして国連文書の中で報告されている。
 また、ローズ氏は「政府、警察当局、人権グループ、メディア関係者が統一教会信者の拉致監禁問題を完全に無視してきた。これは一種のブラック・アウトだ」(ローズ氏)と表現したのがとても印象深かった。

 国際人権活動家達の報告に静かに頷いていた後藤氏は現在、拉致監禁を実行した職業改宗者を訴えて民事訴訟を展開している。同氏は「拉致監禁を計画した牧師が拉致監禁のマニュアルを紹介しているビデオを入手した。彼らが非人間的な拉致監禁を組織的に実行していきたことが裁判で明らかになるだろう」と期待する。

 後藤氏は最後に、「(統一教会創始者)文鮮明師が亡くなったこともあって、信者の中には動揺も見られる。職業改宗者たちはこの時を拉致監禁のチャンスと見て活発に動き出す兆候がある。警戒しなければならない」と語った。
 30代を奪われた男は「自分のような犠牲者を出さないために今後も戦う」と決意を語った。同氏は現在、「全国拉致監禁・強制改宗被害者の会」の代表だ。