デイリーNKによれば、故金正日労働党総書記の長男金正男氏の息子、キム・ハンソル君が16日、フィンランドTVとのインタビューで、「いつか北朝鮮に行き、彼らがもう少し楽に暮らせるよう手助けしたい。韓国の友人達とバスで南北間を往来できたらどんなに素晴らしいだろう」と話したという。ハンソル君の久しぶりの発言だ。

 デイリーNKによれば、「キム・ハンソルはフィンランド出身の政治家、エリザベス・レン(Rehn)が進行役のインタビューの中で語った」という。読者の中には、「どうしてハンソル君はフィンランドTVとの会見に応じたのか」と考える人もいるだろう。

 欧州駐在の金ファミリーはフィンランドの外交官たちと関係が深いことは良く知られている。その人脈は故金総書記の異母弟、金平一氏(故金日成主席と金聖愛夫人の間の息子)が駐フィンランド大使時代(1994年〜98年)に培ったものだ。金平一氏の動向が外部に流れる場合、同大使との関係が深いフィンランド外交筋が多い。金大使の駐ワルシャワ大使就任後もその繋がりは変わらない、といわれる。
 その意味で、ハンソル君がフィンランドTVとのインタビューに応じたのも決して偶然ではないが、18歳の少年が自分でインタビュー相手を選んだ、とは考え難い。誰かの仲介人がいるはずだ。
 ここまで考えると、金平一大使ファミリーと金正男氏の繋がりが浮かび上がってくる。欧州を頻繁に訪れた正男氏が金平一大使家族と交流があったとしても不思議ではない。

 ハンソル君は「自分は故金総書記と金正恩第一書記と会ったことがない」と述べているが、駐ポーランドの金大使ファミリーのほか、駐オーストリアの金光燮大使(金正日総書記の義弟)らとは会ったことがあるのではないか。ちなみに、ハンソル君の身辺警備は駐ベオグラードの北外交官たちが担当しているが、金平一大使は1982年、駐ユーゴスラビア武官としてベオグラードに駐在している。

 故金総書記は傍系のファミリーを小枝と呼び、海外に追放する政策を実施してきたが、金正男氏暗殺計画が最近、脱北工作員の口から飛び出してきたところを見ると、主流派の平壌側が海外組・金ファミリーの動向に神経質となっているのかもしれない。
 金正恩政権は発足してまだ日が浅い。その権力基盤も決して磐石ではない。それだけに、海外組・金ファミリーの結束というシナリオは妨げなければならないはずだ。


 注・北朝鮮は今日、駐ストックホルムの同国大使館からフィンランドをケアしている。