知人の北朝鮮外交官とのインタビューの一部を紹介する。

 ――12月の大統領選挙に無所属の安哲秀ソウル大融合科学技術大学院長が正式に出馬を表明した。若い世代に人気のある同氏は与党セヌリ党の朴槿恵氏の対抗馬と予想されている。

 「安氏はわれわれには無名の人物に過ぎない。その点、朴女史はわが国でも良く知られている。その政策も信念も分っているから、わが国としては交渉しやすい相手だ、という点で朴女史のほうが無名の安氏よりはいい」(同外交官は「支持する」という言葉を避けて、「交渉しやすい」と表現した)。

 ――話は飛ぶ。故金正日労働党総書記の専属料理人、藤本健二氏は今月、再訪朝を試み、北京で旅券を待っていたが、拒否され帰国した。金正恩第1書記は、前回の訪朝(7月21日〜8月4日)の際には「いつでも歓迎する」と述べたというが、藤本氏に対する北の態度は変わったのか。

 「わが国の藤本氏への立場は変わらない。多分、今回はコミュニケーションで問題があったか、技術的な問題が生じただけだろう」
 (韓国外交筋は「藤本氏は北朝鮮の言葉を間違って受け取っていた可能性がある。藤本氏が願う時に訪朝できるのではなく、北が願う時に訪朝できるという意味だ。藤本氏は金正恩第1書記に歓迎されたので少々ハイとなっていた。また、藤本氏が帰国後、日本のメディアにいろいろなことを語ったので、北側は不快となっている点もあるかもしれない」と分析している)

 ――金正恩第1書記は国内経済の再生に乗り出してきた。同第1書記の初の経済改善措置である「6・28方針」について。

 「今月25日開催される最高人民会議(国会に相当)で正式に関連法案が採択される予定だ。同経済方針は英語ではニュー・エコノミックス・マネージメント・システム(新経済管理体制)と呼ぶ。特定の経済地帯だけではなく、通貨、金融政策を含む包括的な経済刷新案だ」

 ――最後に、欧州の金ファミリーの動向について。

 「金光燮大使(故金総書記の義弟、駐オーストリア大使)は今月末にウィーンに帰任する。ワルシャワの金平一大使(故金日成主席と金聖愛夫人の間の息子、駐ポーランド大使)は既に帰任しているだろう」
 (ウィーンの金大使は来年でオーストリア駐在20年目を、ワルシャワの金大使は来年で駐ポーランド大使就任15年目を、それぞれ迎える)