ウィーンで29日夜、ポップスの女王マドンナのコンサートが開かれた。マドンナのコンサートはいつもファンたちで大騒ぎとなるが、ワルシャワで8月1日に開かれるマドンナのコンサートはウィーンの騒ぎどこでは済まないだろう。
 マドンナのポーランド入りに先駆け、同国のローマ・カトリック教会の青年信者グループ「青年十字軍」が「コンサートの中止」を市当局に呼びかけた。ワルシャワからの情報によると、約4万5000人の国民がインターネット上で「コンサート中止」に支持表明している。
 その呼びかけに呼応するように、3人の神父たちが「マドンナのコンサートが中止されるように祈ろう」と信者たちにアピールしたばかりだ。神父たちは「聖母マリア、神、キリスト教が侮辱される」という。それだけではない。カトリック系ジャーナリスト同盟もコンサート反対を表明している、といった具合だ。

 ポーランド国民がマドンナ・コンサートに強く反発する背景には、コンサートの日が8月1日だ、ということもある。1944年、ナチス・ドイツ軍の侵攻に抵抗して武装蜂起したポーランド国民約20万人が犠牲となった日(通称ワルシャワ蜂起)だ。その歴史的な日にマドンナのコンサートが開かれ、馬鹿騒ぎとなることに多くの国民は抵抗を感じるからだ。
 ワルシャワ市当局はコンサート主催者側と交渉し、マドンナが舞台に登場する前にワルシャワ蜂起に関するドキュメントフィルムを放映し、犠牲者に黙祷を捧げるという調停案を出しているという。

 記憶力の良い読者ならば、3年前にも同様のことがあった、と指摘されるだろう。その通りだ。マドンナは09年8月15日、すなわち、ローマ・カトリック教会の「聖母マリアの昇天の日」の祝日にワルシャワでコンサードを計画したことがあった。当時もカトリック系極右グループ「プロ・ポロ二ア」が「聖母マリアの昇天を祝う日に、肌を露わにして歌う米国歌手のコンサートが開催されることはスキャンダルだ。コンサートを中止するか、延期すべきだ」と呼びかけ、レフ・カチンスキ大統領(当時)も「15日のコンサート中止」を要請する書簡を送るなど、ポーランド全土で「マドンナのコンサート中止」運動が広がったものだ。

 それにしても不思議だ。マドンナ側は8月1日がポーランドでどのような日か知らなかったはずがない。3年前の8月15日の場合もそうだ。マドンナ側は歴史的な日や教会の祝日にコンサートを敢えて開き、話題を提供しようとしているのではないか。1年は365日だ。カトリック教国のワルシャワでコンサートを開催するのなら、別の日を選べは「コンサート中止運動」は起きないだろう。メディアに話題を提供することで、コンサートの成功を図る、といった主催者側の意図が垣間見える。