先進国クラブと呼ばれる経済協力開発機構(OECD、本部パリ)加盟国の失業者総数は約4770万人という。4年前に金融危機が発生して以来、1410万人増加したことになる。増加分の半分以上は欧州だ。特に、ユーロ圏(17カ国)では失業者が急増している。今年5月のユーロ圏の平均失業率は11・1%で最悪だ。例えば、スペインは今年第1四半期の失業率は23・8%でトップ、それを追ってギリシャが21・5%、ポルトガル14・9%、アイルランド14・8%、スロバキア13・2%だ。
深刻な点は、15歳から24歳の若者の高失業率だ。ギリシャでは52・1%、スペインが50・8%と2人に1人の若者が失業しているのだ。ちなみに、加盟国34カ国のOECDの平均失業率は7・9%、若者の失業率は16・3%だ。欧州経済の原動力ドイツの失業率は5・6%、若者8・0%で、いずれもユーロ圏の中ではオーストリア(4・1%、8・7%)と共に最も低い。1年以上の長期失業者率は昨年末、OECD諸国では全体の35%だったが、欧州諸国では44%と高い。現在の経済成長では雇用を拡大し、失業者を減少することは期待薄だ。
以上、OECDの経済統計から紹介した。統計と実感は必ずしも一致しないが、失業者の増加というニュースに接する度、心が痛くなる。働きたくても職場がない、という状況は普通の人間の場合、内外共に苦しいことだ。日々の生活が苦しくなるだけではない。その人の尊厳まで傷つくことが少なくないからだ。
太陽が昇り、光が窓に差し込む頃、労働者は朝食を済ませて職場に向かう。当方が住むウィーン市16区は昔から「労働者の区」と呼ばれている。冬ならば、労働者が吸うタバコの煙が白く漂い、夏にはランチボックスを抱えながら早足で駅に向かう姿が見られる。彼らは時には朝早く起きて職場に行かなければならないことを嘆くが、失業者はアパートの窓から、職場に向かう労働者の姿を羨望と自己卑下の混ざった思いで見つめている。
健康な人間に働く職場がないということは悲劇だ。労働は時として辛いが、生きている喜びの一つでもあるからだ。長期失業者は一層悲しい。職場を探す意欲が減少する一方、生きていることに疲れを感じるようになるからだ。もちろん、失業者の増加は社会の治安にとっても危険だ。特に、若者たちの失業増加は大きな社会問題だ。
世界には助けを必要とする多くの人々がいる。若者の失業者が一定期間、ボランティアとして老人や病人の援助に従事できる社会相互援助システムを確立したらどうだろうか。他者の為に生きている、という実感を得ることで喜びを得、今後の人生に対し積極的にチャレンジできるようになるのではないか。
オーストリア初のユダヤ人首相のブルーノ・クライスキー(1911〜90年)は「財政赤字が少し増えたとしても、失業者を減らしたい」と吐露したことがあった。当方は冷戦時代、このクライスキー首相の発言を批判的に受け取っていたが、「富の公平な分配」などで資本主義経済の問題点が明らかになってきた今日、その発言を懐かしく思い出している。
深刻な点は、15歳から24歳の若者の高失業率だ。ギリシャでは52・1%、スペインが50・8%と2人に1人の若者が失業しているのだ。ちなみに、加盟国34カ国のOECDの平均失業率は7・9%、若者の失業率は16・3%だ。欧州経済の原動力ドイツの失業率は5・6%、若者8・0%で、いずれもユーロ圏の中ではオーストリア(4・1%、8・7%)と共に最も低い。1年以上の長期失業者率は昨年末、OECD諸国では全体の35%だったが、欧州諸国では44%と高い。現在の経済成長では雇用を拡大し、失業者を減少することは期待薄だ。
以上、OECDの経済統計から紹介した。統計と実感は必ずしも一致しないが、失業者の増加というニュースに接する度、心が痛くなる。働きたくても職場がない、という状況は普通の人間の場合、内外共に苦しいことだ。日々の生活が苦しくなるだけではない。その人の尊厳まで傷つくことが少なくないからだ。
太陽が昇り、光が窓に差し込む頃、労働者は朝食を済ませて職場に向かう。当方が住むウィーン市16区は昔から「労働者の区」と呼ばれている。冬ならば、労働者が吸うタバコの煙が白く漂い、夏にはランチボックスを抱えながら早足で駅に向かう姿が見られる。彼らは時には朝早く起きて職場に行かなければならないことを嘆くが、失業者はアパートの窓から、職場に向かう労働者の姿を羨望と自己卑下の混ざった思いで見つめている。
健康な人間に働く職場がないということは悲劇だ。労働は時として辛いが、生きている喜びの一つでもあるからだ。長期失業者は一層悲しい。職場を探す意欲が減少する一方、生きていることに疲れを感じるようになるからだ。もちろん、失業者の増加は社会の治安にとっても危険だ。特に、若者たちの失業増加は大きな社会問題だ。
世界には助けを必要とする多くの人々がいる。若者の失業者が一定期間、ボランティアとして老人や病人の援助に従事できる社会相互援助システムを確立したらどうだろうか。他者の為に生きている、という実感を得ることで喜びを得、今後の人生に対し積極的にチャレンジできるようになるのではないか。
オーストリア初のユダヤ人首相のブルーノ・クライスキー(1911〜90年)は「財政赤字が少し増えたとしても、失業者を減らしたい」と吐露したことがあった。当方は冷戦時代、このクライスキー首相の発言を批判的に受け取っていたが、「富の公平な分配」などで資本主義経済の問題点が明らかになってきた今日、その発言を懐かしく思い出している。