少々遅くなったが、アゼルバイジャンの首都バクーで開催された「ユーロビジョン」(Eurovision)の最終日の決勝戦について書く。

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▲バクーで開催された「ユーロビジョン」(2012年5月24日、オーストリア国営放送中継から撮影)

 ブックメーカーが予想していた通り、2012年の勝利者はEuphoriaを歌ったモロッコ出身のスウェーデン人のLoreen(ロリーン)だった。得点は歴代2位の372点だったことを見ても分かるように、圧倒的な勝利だ。そしてセルビアのスーパー・スターでロリーンの対抗候補Zeljko Joksimovicさんが第3位に入った。

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▲バクーで開催された「ユーロビジョン」の司会者たち(2012年5月24日、オーストリア国営放送中継から撮影)

 予想外といえば、ロシアのおばあさんグループ「ブラノボのおばあさん」だ。日本のメディアは優勝したロリーンよりロシアのおばあさんグループの第2位を大きく報道していたが、「ユーロビジョン」はソング・コンテストだ。その観点からいえば、歌唱力も乏しく、他の参加歌手とは比較できるものではなかった。華やかな舞台で歌う素朴なおばあさんたちの姿が聴衆の人気を集めたのだろう。
 付け加えるならば、ロシアのおばあさんグループがロリーンを破り、1位となっていたら、「ユーロビジョン」の主催者側はショックを受け、コンテストの再考を強いられただろう(当方が住むオーストリアから参加したTrackshittazは予選で落ちた。42カ国の参加国中、最下位の得点だった。音楽の都ウィーンを誇るオーストリアの名前が泣く、というものだ。次回を期待したい)。

 当方は予選段階でロリーンに最高点をつけていたので、結果には満足している。決勝ではキプロスのIvi Adamouが予選の時より数段素晴らしい歌唱力を発揮していたのが印象的だった。プロの歌手でも大舞台でその実力を発揮するためには場数を多く踏む必要があるわけだ。

 さて、ここではコンテストの「その後」についても書きたい。ロリーンのEuphoriaは多くの欧州の国のチャートで既にトップに躍り出ている。ロリーンも「反響の大きさに驚いている」と述べているほどだ。当方は彼女の歌を聴きたいと思い、You Tubeで探したら直ぐ見つかった。既に450万人がクリックしていた。翌日また同じサイトを開けると既に500万人を突破。そしてコラムを書いているこの時(ウィーン時間29日午前)、600万人を超えていた。なんというスピードだ。これは一つのサイトだけの話だ。ロリーンの歌を紹介するサイトは無数にある。バクーで優勝したロリーンは今や世界のスーパー・スターとして注目されているわけだ。

 地球は限りなく小さくなっている。メディアの世界に生きる者がこんなことを言っては笑われるが、われわれは歌やニュースが瞬時に伝わり、共有できる時代圏に生きているのだ。素晴らしい時代に生きていることに改めて感謝を捧げたい。その一方、内省する時間すら与えず膨張し続ける時代のテンポを前に、漠然とした不安も感じる。素晴らしき時代が突きつける「怖さ」とでもいえるかもしれない。