アイルランド政府は未成年者への性的虐待に関する届け出義務の強化案を検討している。法務省と家庭省が共同作成した法案によると、未成年者への性的犯罪に関する情報を隠蔽した場合、最高5年間の禁固刑が課せられる。聖職者が告解の秘密を守る義務を理由に沈黙できない。アラン・シャッター法相とフランセス・フィッツジェラルド家庭問題相は25日、法案を発表した。


 欧州では先駆けて同国で聖職者の未成年者への性的虐待事件が発覚。その件数も他の欧州教会を大きく上回った。教会側が性犯罪を犯した聖職者を庇ったり、隠蔽するケースも明らかになった。そこで同国政府は昨年から聖職者の性犯罪対策として「告解秘密の義務」を無効にする法案を検討してきた。


 シャッター法相は「カトリック教会の聖職者による未成年者への性的虐待問題を調査してきた政府委員会の体験から、関連法の強化の必要性が明らかになった。未成年者への性的犯罪を知りながら、告解の秘密保持を理由に沈黙することは許されないことだ」という。もちろん、法案はカトリック教会の聖職者だけを対象としているわけではない。未成年者が関わる全ての組織、グループの関係者にも該当することだ。同国政府によると、法案は来月議会で審議され、今年末には発効させる予定という。


 届出義務では、性的犯罪を犯した後、悔い改めた犯人の告解を聞いた聖職者(聴罪師)に対しても警察当局への報告義務が生じる。それを告解の秘密義務を理由に伝達しないということは今後許されなくなる。


 政府の法案に対し、同国のカトリック教会側は「告解の秘密義務は絶対であり、それを破棄できない」という。同国司教会議は「告解の秘密義務の解消は罪を告白する者の権利を蹂躙することになる」と述べている。カトリック教会では告解は赦しの秘跡と呼ばれる。


 医者、弁護士、公務員はその職務に関する内容を部外に漏らしてはならない守秘義務がある。医者が患者の病歴を他者に漏らし、弁護士が依頼人(Client)の事情を外部に流したならば、漏らされた関係者は大きなハンデイを背負う一方、医者や弁護士は信頼を失うだけではなく、その資格を剥奪される。同じように、告解秘密義務の無効法案が施行された場合、信者たちは聖職者に懺悔しなくなる事態も予想される。その影響はアイルランド教会だけではなく、世界のカトリック教会全般にも及ぶことは必至だ。それだけに、同法案の審議の行方が注目されるわけだ。