予想されたことだが、旧東独国民が最も神を信じていない、という調査結果が明らかになった。米シカゴ大学が実施した調査に基づく。それによると、旧東独国民の8%しか人格神を信じていない。そして「神を信じる人々は今後も減少する」と予想されているのだ。同時に、積極的に神の存在を否定する無神論者は46%だった。

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▲ベルリン市のブランデンブルク門(2011年5月撮影)

 当方はこのコラム欄で「旧東独国民が欧州で最も世俗的」2009年12月18日)を書いたが、今回の調査結果はそれを裏付けるものだ。旧東独時代、共産政権の崩壊、民主化運動を主導したのはライプツィヒの福音教会を中心とした知識人たちだった。その一人が先月18日にドイツ連邦大統領に選出されたヨアヒム・ガウク氏だ。新大統領は旧東独の人権活動家でルター派教会元牧師だった。ドイツの再統合後、旧東独の福音教会は信者がいなくなり、ほとんど消滅状態だ。それに代わって、旧東独地域では犯罪が増加し、過激民族派運動が台頭してきた。

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▲ベルリン市のアレクサンダー広場(2011年5月撮影)

 バチカン放送独語電子版によると、旧東独ザクセン州のプロテスタント教会聖職者だったアレクセル・ノアク氏は旧東独国民の脱教会化の原因について、「旧東独では1945年以降、信仰をもつ数百万人の国民が旧西独に行った。その空白は埋められることなく今日まで残されてきた。換言すれば、旧東独のドイツ社会主義統一党(SED)政権の対宗教政策は成功したわけだ」と述べている。


 興味深い点は、旧東独の隣国ポーランドでは冷戦時代、カトリック教会は活気を帯び、日曜礼拝は信者で一杯だった。国家評議会議長だったヤルゼンスキー氏(元)大統領は当時、、「ポーランドは共産国家だが、思想的にはカトリック教国だ」と認めざるを得なかった。同国の民主化運動は自主管理労組「連帯」と共に、カトリック教会が大きな役割を果たしたことは周知の事実だ。同国国民はその後、教会離れの傾向も見られ出したが、旧東独のような脱教会化はまだない。


 両国の相違について、プロテスタント宗教社会学のゲルト・ピッケル(Gert Pickel)氏は「ポーランドはカトリック教会が中心だった。一方、旧東独はプロテスタント教会が主導的立場だった。共産政権にとって、プロテスタント教会のほうが迫害しやすかったのだ。カトリック教会の場合、ローマ主導だが、プロテスタント教会は国単位の構造だからだ」と説明、、旧東独と同じように、神を信じる国民が少ないエストニアもプロテスタント教国だ。同氏によると、旧東独で例外はスラブ系少数民族ソルブ人たちが住む地域という。彼らもカトリック教信者たちだ。


 最後に、当方の独断を紹介する。カトリック教会がプロテスタント教会より共産政権の宗教政策に対抗できたのはバチカン法王庁を中心とするカトリック教会が共産政権と同じ独裁的体質を有しているからだ。一方、教会の独裁から自由を求めて始まったプロテスタント教会の信者たちは共産政権の弾圧にも抵抗を示したが、東西両ドイツの再統一後、‘更なる自由‘を求めて教会に背を向けだしたのだ。