「明日の天気を予測する気象官」と「国民に奉仕すべき政治家」の信頼度調査によると、国民の70%は明日の天気を予測する気象官を信じ、政治家を信頼する国民は5%に過ぎなかった、という結果が明らかになった。オーストリア日刊紙クリア25日付が少しシニカルに報じた。
 オーストリアではここ数カ月間、政党の不法な党献金問題、政治家の汚職腐敗問題が大きな話題を呼んでいる。与党政治家だけではない。野党の政治家も程度の差こそあれ同様だ。これでもか、これでもか、といった感じがする。このままいくと、「クリーンな政治家は一人もいない」という結論に達するのはもはや不可避な状況だ。
 欧州戦闘機(ユーロファイター)購入に関係した元国防相、元副首相の汚職容疑が話題になる一方、オーストリア・テレコムへの党献金問題ではシュッセル元政権時代の閣僚が次々と汚職容疑をもたれ、同国欧州議会議員の不法なロビー活動が発覚する、といった具合だ。
 欧州連合(EU)諸国が金融・財政危機下にあって緊縮政策が不可欠な時、与党政治家が「自身の利益のために不法な金銭を入手していた」というわけで、国民の政治家への不信感はこれまでにないほど深まっている。
 ファイマン現連立政権(「社会民主党」と「国民党」2大政党から構成)はもちろん手をこまねいているいわけではない。不法な党献金問題では7000ユーロ以上の献金の場合、誰がどれだけを献金したかを公表する義務を課す党献金関連法の作成に乗り出す一方、腐敗汚職対策の関連法の強化にも乗り出しているが、実際、履行されるまでにはまだまだ紆余曲折が予想される。
 特に、国民党関係の閣僚、政治家に腐敗汚職が多発していることから、シュビンデルエッガー党首(外相)は「党員として遵守しなければならない行動規約」の作成を提案しているほどだ。
 ちなみに、オーストリアでは国会議員をしながらサイドビジネスをする政治家が多いが、副業の内容を申告ぜずにやっていた政治家も少なくないことが明らかになっている。
 叩けば叩くほど、埃が飛び出すのがオーストリアの政界の現状だろう。このコラム欄では外交官ではない元政治家、著名人、聖職者、その家族関係者にも「外交旅券」が発給されていた事件を紹介したばかりだ(「『外交旅券』発給スキャンダル」2012年1月15日)。これなど、他の国では考えられないことだが、アルプスの小国オーストリアではこの種の縁故主義は到る所でみられる現象だ。同国が「西側の東欧(旧東欧共産政権)」と揶揄される所以でもある。
 なお、オーストリアでは来年、総選挙が行われる予定だが、国民党は汚職腐敗問題で支持率を大きく失う一方、極右政党の自由党が第1党に躍進する可能性が現実味を帯びてきている。