ジュネーブの国連人権理事会(理事国47カ国)は22日、イランの人権状況に懸念を表明すると共に、国連イラン人権特別報告者アフマド・シャヒード氏の任期1年間の延期などを明記した決議案 (A/HRC/19/L.22)を賛成22票、反対5票、棄権20票で採択した。反対した5カ国は、ロシア、中国、キューバ、カタール、バクグラデシュだった。
 決議案は特別報告者のレポートを歓迎し、イランの人権状況が急速に悪化してきたことに「深刻な懸念」を表明。昨年一年間だけで少なくとも670人の国民が処刑されたこと、その処刑方法も石打ち刑など残虐なやり方が再導入されたこと、青年たちの処刑や公開処刑が増えていることなどに言及し、イラン当局に警告を発している。
 また、少数派宗派に属する国民への弾圧も強化され、その宗教関連施設の強制的閉鎖、関係者の有罪判決などが行われているという。例えば、イラン人のキリスト教聖職者がその背教を理由に死刑判決を受けた。また、芸術家への迫害、インターネットの検閲、「言論の自由」の制限も指摘された。イランでは現在、42人のジャーナリストが刑務所に拘束されている。
 決議案はまた、国連人権特別報告者にイランの人権状況調査へのアクセスを認めるようにイラン当局に要求し、「第22会期と第67国連総会までにイラン人権最新報告書を理事会に提出するように」と特別報告者に要請した。
 理事国の発言内容を少し紹介する。スウェーデン代表は「イランは特別報告者の入国と人権調査のアクセスを認め、人権理事会と協調すべきだ」と指摘。それに対し、キューバ代表は「イランは自主決定の権利を有する。イラン内政への干渉は中止すべきだ」と強調。イラン代表は「人権理事会は特定の国の政治的利益を擁護する機関となっている。イラン政府は人権理事会と協力している。特別報告者が国連行動規約を遵守せず、公平な調査が期待できないので入国を拒否した」と反論。決議案に反対したロシア代表は「関係国を孤立化させる政治的な決議案は非生産的だ。対話を阻害するだけだ」と説明。中国代表も同様、「問題解決のベストは対話だ。加盟国の人権問題に対して外部が圧力を行使することに
は反対だ。理事会がイランの人権状況を公平に評価することを期待する」と注文をつけている。
 「人権問題」と「核問題」の相違こそあるが、ジュネーブの人権理事会の動向は、ウィーンで開催される国際原子力機関(IAEA)定例理事会の進展状況と酷似している。イランを批判する理事国と擁護する理事国はいつも同じだ。