世界最大のキリスト教宗派、ローマ・カトリック教会の総本山、バチカン法王庁がその内部情報の流出で頭を悩ましていることはこの欄でも紹介した。バチカンのロムバルディ報道官が先月、“Vatileaks”(ヴァチ・リークス)と呼称した問題だ。
 バチカンはリーク事件に対して手をこまねているわけではない。ローマ法王べネディクト16世が率先して対策に乗り出したのだ。バチカン日刊紙オッセルパトーレ・ロマーノが3月17日付けで報じたところによると、べネディクト16世はバチカンの内部情報がメデイアに流出した事件について「大きなショックを受けた」(バチカン独語電子版)という。そこでハイレベルの調査委員会を設置して調べるように関係者に指令を出したというのだ。すなわち、ローマ法王直々がリーク事件の犯人探しに乗り出してきたわけだ。
 バチカンを犯人探しに追い詰めた直接の契機はこの欄でも紹介した「枢機卿の『法王殺人の陰謀説』」2012年2月13日)の内容だ。それによると、ローマ法王べネディクト16世が12カ月以内(今年11月まで)に殺される、というバチカンの機密書簡内容がイタリアの一部メディアで報じられたことだ。
 バチカン側は当時、この報道内容を「馬鹿げた内容」(ロムバルディ報道官)と必死に否定したが、その法王殺人陰謀説が高位聖職者の話として報じられたという事実から、バチカン内部に教会への忠誠心のない者が潜伏している可能性があるわけだ。メディアの報道に対して普段は冷静な対応に終始するバチカンがこの陰謀説のリーク源を掴むために犯人探しに乗り出さざるを得なくなったのだろう。
 バチカン日刊紙とのインタビューの中で、バチカン国務省総務局長官代理のジョヴァンニ・アンジェロ・ベッチウ大司教は「国務省関係者は自分の出世と陰謀だけを考えている、との批判は当たっていないが、関係者の中には不正直で内務文書を外部のメデイアに流す者もいるかもしれない」と説明し、「バチカン関係者は再度、内外共に刷新し、相互信頼関係を確立しなければならない。その前提として真剣さ、忠誠、そして正確さが問われる」と主張している。
 バチカンの犯人探しが成功するかどうか、ハイレベル調査委員会の捜査能力を注目したい。