リビアでカダフィ独裁政権打倒の反政府デモがスタートして今月17日で1年目を迎えた。ロイター通信によると、「首都トリポリの殉教者広場(旧称・緑の広場)では国旗がはためき、国内各地から集まった多くの人が喜びの声を上げた」という。
 42年間、独裁者として君臨したリビアのカダフィ大佐は昨年10月20日、最後の拠点だった中部シルテで反政権派によって拘束され、その直後、死亡が確認された。
 その後、国民評議会(NTC)が同国を暫定統治している。NTCのアブドルジャリル議長は民主運動1周年の日、「民主的な国家を作っていく」と表明している。
 ところで、ドイツ国営放送ZDFは今月15日、オックスフォード研究所と共同でリビア国民の意識調査を実施した。その結果をここで紹介する。リビアのカダフィ政権崩壊直後、リビア全土で約2000人の国民を対象に調査された。
 その結果によると、国民の約49%が「政治と宗教は不分離であるべきだ」と答え、21%の国民が「政治と宗教」の分離を主張した。ただし、イスラム法国家(シャリア導入)の樹立を期待している国民は4%に過ぎなかった。
 リビア国民の過半数は「政治と宗教」の分離に反対する一方、イスラム教主導の神権国家にはほぼ全ての国民が明確に距離を置いているわけだ。換言すれば、トルコのようなイスラム教を主要宗教としながら、世俗的な国家を建設していくのがリビア国民の願いといえるかもしれない。 
 興味深い点は、40年以上、カダフィ独裁政権を体験してきた国民の3分の1が新たな「強いリーダー」を願望していることだ。独裁者にコリゴリしてきたリビア国民の強い指導者待望論について、中東問題専門家のアミール・ベアティ氏は「リビアだけではなく、アラブ諸国では一般的に指導者に強く、権威のある父親像を求める傾向が強い。それはイスラム教の教えに立脚するものだ。リビアの場合、カダフィ政権崩壊後、政治的にも空白が生じ、それを埋め合わせる指導力を有した政治家は出てきていない。だから、国民の中に自然と新たな強い指導者を待望する声が高まってくるのだろう」と説明する。ちなみに、4分の3の国民が「リビアの将来を楽観視」している。

 なお、ベアティ氏は「リビア国民は民主主義の経験がない。国内には民主的組織も存在しない。存在するのはさまざまな部族だ。彼らの多くは他の部族と敵対関係にある。そのようなリビアで民主国家を建設することは非常に困難な仕事だ。最大の問題点は反カダフィ政権と戦った民兵組織の非武装化と正式な治安部隊への統合だ。民兵組織の解体がうまくいかないと、リビアは再び内戦状況の陥る危険性が出てくる」と警告する。