独連邦大統領(任期5年)は国民の直接選挙ではなく、連邦議会と州議会代表から構成された連邦会議で選出され、その政治権限は限られている。名誉職に近い立場だ。
だから、ニーダーザクセン州首相時代(2003−10年)の汚職・賄賂容疑で辞任したウルフ前大統領から、旧東独の人権活動家でルター派教会牧師のヨアヒム・ガウク氏(72)が3月18日、後継大統領に選出されたとしても、独政界全般には大きな変化や修正は考えられない。
考えられる点は、ガウク氏を強く押した連立政権パートナー、自由民主党(FDP)のレスラー党首とメルケル首相との関係が少しギスギスするかもしれないことだ。
同時に、人権活動家として旧東西ドイツの統一後、約10年間、旧東独の秘密警察シュタージ関連文書の調査と管理役を務めたガウク氏は一言居士だ。新大統領がメルケル政権の政策に口を挟んだり、批判するケースが出てくるかもしれない。メルケル首相とガウク次期大統領は同じ旧東独出身だが、意見の疎通が難しくなる事態も予想できる。しかし、それらも致命的なダメージを与えることはないだろう。
問題はガウク氏自身だ。結婚して4人の子供の父親であるガウク氏は2000年以来、付き合っている女性(52)がいる。女性は地方紙ニュルンベルガー・ツァイトゥング紙内政担当チーフ・ジャーナリストだ。正式に結婚していない。本妻とは1991年以降、別居状態だが、離婚していない。
ガウク氏が大統領に選出されれば、その女性は当然、ファースト・レディーとして一緒にベルリンのベレヴュー宮の大統領府に入ることになる。だから「ガウク氏は大統領職を開始する前に正式に離婚し、再婚するなど身辺を整理すべきだ」という声がキリスト教社会同盟(CSU)家庭問題担当のノルベルト・ガイス議員から出てくるわけだ。
大統領は政治権限は少ないが、国民の信頼を得る政治家が求められる。その意味で身辺の整理は不可欠なわけだ。
もう一つの問題は、ガウク氏がルター派教会牧師だったという点だ。ドイツではローマ・カトリック教会信者数とプロテスタント教会信者数はほぼ拮抗している。ガウク氏の牧師時代の発言を振り返ると、兄弟教会のローマ・カトリック教会に対してかなり批判的だ。
同氏は3年前、バチカン放送とのインタビューの中で「カトリック教会はもっとオープンになるべきだ」と助言する一方、ドイツ国家社会主義(ナチス)政権が推進した反ユダヤ主義政策を擁護した容疑を受けるローマ法王ピウス12世(在位1939−58年)時代のバチカン関連文書の公開を要求している。ピウス12世とナチス政権の癒着関係を否定してきたバチカンにとって、ガウク氏の要求は少々、不愉快なものだ。ちなみに、ウルフ前大統領夫妻はカトリック教徒だ。前大統領の場合、再婚問題がハードルだったが、バチカンとの関係は基本的には良好だった。
だから、ニーダーザクセン州首相時代(2003−10年)の汚職・賄賂容疑で辞任したウルフ前大統領から、旧東独の人権活動家でルター派教会牧師のヨアヒム・ガウク氏(72)が3月18日、後継大統領に選出されたとしても、独政界全般には大きな変化や修正は考えられない。
考えられる点は、ガウク氏を強く押した連立政権パートナー、自由民主党(FDP)のレスラー党首とメルケル首相との関係が少しギスギスするかもしれないことだ。
同時に、人権活動家として旧東西ドイツの統一後、約10年間、旧東独の秘密警察シュタージ関連文書の調査と管理役を務めたガウク氏は一言居士だ。新大統領がメルケル政権の政策に口を挟んだり、批判するケースが出てくるかもしれない。メルケル首相とガウク次期大統領は同じ旧東独出身だが、意見の疎通が難しくなる事態も予想できる。しかし、それらも致命的なダメージを与えることはないだろう。
問題はガウク氏自身だ。結婚して4人の子供の父親であるガウク氏は2000年以来、付き合っている女性(52)がいる。女性は地方紙ニュルンベルガー・ツァイトゥング紙内政担当チーフ・ジャーナリストだ。正式に結婚していない。本妻とは1991年以降、別居状態だが、離婚していない。
ガウク氏が大統領に選出されれば、その女性は当然、ファースト・レディーとして一緒にベルリンのベレヴュー宮の大統領府に入ることになる。だから「ガウク氏は大統領職を開始する前に正式に離婚し、再婚するなど身辺を整理すべきだ」という声がキリスト教社会同盟(CSU)家庭問題担当のノルベルト・ガイス議員から出てくるわけだ。
大統領は政治権限は少ないが、国民の信頼を得る政治家が求められる。その意味で身辺の整理は不可欠なわけだ。
もう一つの問題は、ガウク氏がルター派教会牧師だったという点だ。ドイツではローマ・カトリック教会信者数とプロテスタント教会信者数はほぼ拮抗している。ガウク氏の牧師時代の発言を振り返ると、兄弟教会のローマ・カトリック教会に対してかなり批判的だ。
同氏は3年前、バチカン放送とのインタビューの中で「カトリック教会はもっとオープンになるべきだ」と助言する一方、ドイツ国家社会主義(ナチス)政権が推進した反ユダヤ主義政策を擁護した容疑を受けるローマ法王ピウス12世(在位1939−58年)時代のバチカン関連文書の公開を要求している。ピウス12世とナチス政権の癒着関係を否定してきたバチカンにとって、ガウク氏の要求は少々、不愉快なものだ。ちなみに、ウルフ前大統領夫妻はカトリック教徒だ。前大統領の場合、再婚問題がハードルだったが、バチカンとの関係は基本的には良好だった。