国際原子力機関(IAEA)は17日から2日間の日程で理事会を開催する。議題はイラン、シリア、北朝鮮の核問題だ。その中でも、焦点はイランの核問題だ。
 天野之弥事務局長は8日、最新のイラン報告書を35カ国の理事国に提示した。その中でイランの核開発計画の軍事転用容疑をIAEAとしては初めて明記したことから、理事会では欧米理事国とイラン間で激しい議論のやり取りが行われるものと予想される。
 ところで、報告書の付属文書(12頁)を読むと、イランの不法な核関連活動は天野事務局長が就任した2009年12月以降に発生したものではなく(2、3は現在も継続されている)、3期12年間、事務局長を務めたエルバラダイ氏の時代だ。イランの不法核関連活動を記述した理事会決議は過去10回採択されたが、その大多数は同氏の任期期間でのことだ。
 IAEAは2005年にはイランの核軍事転用容疑(通称 Green salt project)問題を熟知していた(付属文書2頁6段)。しかし、エルバラダイ氏は天野氏のように軍事容疑疑惑を記述せず、「IAEAはイランの核計画が平和目的かどうかを検証できない」と述べるだけに留めている。
 もちろん、「情報提供国は10カ国に及ぶ」と明らかにしているように、天野報告書は欧米情報機関からの情報に依存している面が強い。
 それでは、エルバラダイ氏は欧米情報機関から情報提供を受けていなかったのか。天野報告書では「IAEAが独自に検証した情報も含まれている」と記述されていることから、エルバラダイ氏も多くの情報を共有していたと考えるほうが自然だろう。
 エルバラダイ氏は05年、原子力エネルギーの平和利用促進に貢献したとしてノーベル平和賞を受賞したが、IAEAは同氏の任期中、イラクの大量破壊兵器問題や北朝鮮の核問題で成果をもたらすことができなかった。
 一つのエピソードを紹介する。ノーベル平和賞受賞発表直後のウィーンの記者会見でオランダ放送記者が、「エルバラダイ氏、あなたの功績は何ですか」と質問したのだ。そのような質問が飛び出すとは考えてもいなかった同氏はショックを受けた。しかし、多くの記者たちは当時、オランダ放送記者と同様、エルバラダイ氏の功績を明確に理解できず当惑していたことは事実だ。
 イランの核兵器製造容疑が濃厚となった今日、エルバラダイ氏の過去の言動を詳細に検証する必要があるだろう。
 ちなみに、独週刊誌「シュピーゲル」最新号(11月14日号)は「軍事次元」というタイトルでイランの核問題の記事を掲載したが、その中でIAEAの前査察局長(事務次長兼任)、オリ・ハイノネン氏(Olli Heinonen)の証言を紹介している。ハイノネン氏がイランの不法な核関連活動を「イラン報告書」に記述しようとすると、「ボス(エルバラダイ事務局長)はいつもそれにストップをかけた」というのだ。