当方は執念深いほうではない。むしろ嫌な事は直ぐに忘れてしまうタイプに近い、と考えている。
ところが２年前の課題については依然、当方の脳裏に焼きついて消えない。「何か」といえば、２年前の国際原子力機関（ＩＡＥＡ）事務局長選のことでだ。少し、当時の経緯を読者のために説明しておく。
ＩＡＥＡ次期事務局長に在ウィーン国際機関日本政府代表部の天野之弥大使が２００９年７月３日、選出されたが、次期事務局長選は難産だった。
最有力候補と終始見なされてきた天野大使の支持票がなかなか当選ライン（有効投票の３分の２）に到達できなかったからだ。理事国３５カ国の場合、当選するためには２４票の支持国が必要だが、通算５回の投票では２３票止まり。当選に１票足りない状況が続いた。そして６回目の信任投票では、支持票は２３カ国と変わらなかったが、反対票を投じてきた理事国１２国の１国が突然、棄権に回ったのだ。そのため、天野大使は有効投票３４票の３分の２の当選ラインを突破できたというわけだ。
当方の課題は「反対票を投じてきた１２カ国の理事国の中、どの国が６回目の信任投票で棄権に回ったか」を探し出すことだった。事務局長選は秘密投票だから、理事国の間ではさまざまな憶測が流れた。考えられたのは、�“麁洩善親綾�国（ＮＡＭ)の理事国説、��中南米理事国説――だ。
天野氏が当選した直後、国連の職員食堂で同氏に聞いたことがあるが、同氏からは、「そのような外交上のことは絶対公表できない」という返答が戻ってきただけだ。当然だ。
あれから２年間、機会があるたびにさまざまな外交官やＩＡＥＡ関係者にそれとはなく聞いてきた。
ところで最近、当時の理事会議長を務め、事務局長選をオーガナイズしたアルジェリア大使Taous Feroukhl女史と話す機会があったのだ。
「大使、２年前の事務局長選ですが、当時、大使は理事会議長でしたよね」というと、大使は「その通りよ」とニッコリとした。「大使もご存知でしょうが、反対票を投じてきた理事国が棄権に回ったため天野氏は事務局長に選出されたわけですが、どの国が棄権に回ったかを知りたいのです」というと、「その質問には答えられないわね。とにかく、当時、事務局長選は大変だったわ」という。
「ロシアではないですか」と聞くと、「ロシアも中国も最後まで変わらなかった」という。
「それでは中南米理事国ですね」というと、大使は「中南米説は当たっている」と応えてくれた。
そこで当時の理事国３５カ国リストを探し出した。中南米地域に所属する理事国は当時５カ国だ。アルゼンチン、ブラジル、キューバ、エクアドル、メキシコだ。
大使は当方のリストを覗き見ながら、「ＡとＢは違う」とはっきりといった。いよいよ絞られてきた。考えられる国はＣとＤの２国だ。
しかし、ここまでくると、大使の口は閉じた。大使の心を解かす２、３の試みをしたが、成果をもたらさなかった。
これ以上追及しても、大使は気分を害し、口は益々硬くなるだろうと考え、最後の詰めを断念した。“２年前の課題”が解決寸前でまた闇の中に消えてしまった感じがしたが、仕方がなかった。
ところで、天野氏の任期は今年１２月で２年目を迎える。イランの核問題ではエルバラダイ前事務局長とは異なり、強硬姿勢を示してきた。敵も出てきた。天野氏の再選の見通しはどうだろうか。
アルジェリアの大使は、「１期４年間では短すぎるわ。自分の仕事をしたいと考えれば、再選出馬は当然。大多数の理事国もその点は理解しているはずよ」と述べ、天野氏の再選確実を早々と予想してくれた。
ところが２年前の課題については依然、当方の脳裏に焼きついて消えない。「何か」といえば、２年前の国際原子力機関（ＩＡＥＡ）事務局長選のことでだ。少し、当時の経緯を読者のために説明しておく。
ＩＡＥＡ次期事務局長に在ウィーン国際機関日本政府代表部の天野之弥大使が２００９年７月３日、選出されたが、次期事務局長選は難産だった。
最有力候補と終始見なされてきた天野大使の支持票がなかなか当選ライン（有効投票の３分の２）に到達できなかったからだ。理事国３５カ国の場合、当選するためには２４票の支持国が必要だが、通算５回の投票では２３票止まり。当選に１票足りない状況が続いた。そして６回目の信任投票では、支持票は２３カ国と変わらなかったが、反対票を投じてきた理事国１２国の１国が突然、棄権に回ったのだ。そのため、天野大使は有効投票３４票の３分の２の当選ラインを突破できたというわけだ。
当方の課題は「反対票を投じてきた１２カ国の理事国の中、どの国が６回目の信任投票で棄権に回ったか」を探し出すことだった。事務局長選は秘密投票だから、理事国の間ではさまざまな憶測が流れた。考えられたのは、�“麁洩善親綾�国（ＮＡＭ)の理事国説、��中南米理事国説――だ。
天野氏が当選した直後、国連の職員食堂で同氏に聞いたことがあるが、同氏からは、「そのような外交上のことは絶対公表できない」という返答が戻ってきただけだ。当然だ。
あれから２年間、機会があるたびにさまざまな外交官やＩＡＥＡ関係者にそれとはなく聞いてきた。
ところで最近、当時の理事会議長を務め、事務局長選をオーガナイズしたアルジェリア大使Taous Feroukhl女史と話す機会があったのだ。
「大使、２年前の事務局長選ですが、当時、大使は理事会議長でしたよね」というと、大使は「その通りよ」とニッコリとした。「大使もご存知でしょうが、反対票を投じてきた理事国が棄権に回ったため天野氏は事務局長に選出されたわけですが、どの国が棄権に回ったかを知りたいのです」というと、「その質問には答えられないわね。とにかく、当時、事務局長選は大変だったわ」という。
「ロシアではないですか」と聞くと、「ロシアも中国も最後まで変わらなかった」という。
「それでは中南米理事国ですね」というと、大使は「中南米説は当たっている」と応えてくれた。
そこで当時の理事国３５カ国リストを探し出した。中南米地域に所属する理事国は当時５カ国だ。アルゼンチン、ブラジル、キューバ、エクアドル、メキシコだ。
大使は当方のリストを覗き見ながら、「ＡとＢは違う」とはっきりといった。いよいよ絞られてきた。考えられる国はＣとＤの２国だ。
しかし、ここまでくると、大使の口は閉じた。大使の心を解かす２、３の試みをしたが、成果をもたらさなかった。
これ以上追及しても、大使は気分を害し、口は益々硬くなるだろうと考え、最後の詰めを断念した。“２年前の課題”が解決寸前でまた闇の中に消えてしまった感じがしたが、仕方がなかった。
ところで、天野氏の任期は今年１２月で２年目を迎える。イランの核問題ではエルバラダイ前事務局長とは異なり、強硬姿勢を示してきた。敵も出てきた。天野氏の再選の見通しはどうだろうか。
アルジェリアの大使は、「１期４年間では短すぎるわ。自分の仕事をしたいと考えれば、再選出馬は当然。大多数の理事国もその点は理解しているはずよ」と述べ、天野氏の再選確実を早々と予想してくれた。
