国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長は8日夜(日本時間9日未明)、イランの核問題に関する最新報告書を理事国35カ国に提示した。報告書では、イランは過去、核兵器製造の目的で核関連活動を遂行し、その一部は現在も継続されていると指摘している。
具体的には、核弾頭製造に関連する部品の実験、外国人専門家(ロシア人)から核弾頭製造技術の修得、コンピューターによる模擬試験などだ。その上、首都テヘラン近郊のパルチン軍事基地で鉄鋼製コンテターを撮影した衛星写真を入手したという。
上記の諸情報はIAEAが独自に査察・検証し、収集したものではなく、米英ら西側情報機関から入手したものだ。
ところで、「IAEAはいつから西側情報機関の下請け機関となったのか」、「情報提供国の政治的思惑はどうか」等の疑問が当然、付きまとってくる。
IAEAは核エネルギーの平和利用促進を目的に創設された純粋な核専門機関だ。その機関が西側情報機関から入手した内容を意思決定機関の理事会向け報告書に記述したわけだ。
フセイン・イラク政権時代、大量破壊兵器製造疑惑が契機となって対イラク戦争が始まったが、米情報機関がメデイアに流した移動式大量破壊兵器関連情報はイラク戦争終了後、間違っていたことが判明した。衛星写真も100%、正確に解析できないし、操作も可能だ。
IAEAのイラン報告書は「入手した情報は信頼できる」と判断し、「イランの核計画が軍事目的を追求している可能性が高い」と結論を下したわけだ。それに対し、イランのIAEA担当のソルタニエ大使は早速、「バランスに欠き、専門性もなく、政治的動機に基づくものだ」と強く反発している。
核開発を密かに追及する国はIAEAの査察を潜り抜けるためあらゆる手段を考える。特に、ウラン濃縮関連活動はプルトニウム製造とは違い、移動が可能であり、隠蔽しやすい。そのような中で、「その核計画が平和利用か、軍事目的か」を判断することは非常に難しい。試行錯誤しているうちに、核兵器を製造してしまう懸念も出てくる。イランのケースがそうかもしれない。
IAEAの検証作業は、加盟国から情報提供などの連携を受けなければ難しい。その意味で、IAEAは欧米諸国やイスラエルの情報機関からの情報に依存せざるを得ない“台所事情”があるわけだ。
問題は情報提供国側の信頼性だ。自国で核兵器を保有する一方、他国の核兵器製造を阻止しようとすれば、それは明らかに政治的動機に基づく、といった批判を受けることになる。換言すれば、核拡散防止条約(NPT)の問題点だ。
イスラエルの場合、NPTに加盟せず、約200基の核兵器を保有している。その国が自国の安全が脅かされるという理由からイラク・フセイン政権時代を含め過去、2度、武力行使で潜在的敵国の核関連施設を爆破したのだ。
イスラエルの世界観からすれば正しい行動かもしれないが、国際社会では通用しない。その意味から、IAEAは欧米、イスラエル情報機関から入手したイランの核軍事関連情報を安易には信頼できないはずだ。IAEAは入手した情報を慎重に追認する作業を実施しなければならない。
一方、イランはIAEAの査察要求や関係者へのインタビューなどに積極的に応じて未解明問題の解決を図るべきだ。IAEAの要求を「セーフガード協定外の要求」として拒否し続けていては決して前進できない。核計画の全容を開示してこそ、国際社会はイランの核計画を「平和目的」として認知できるのだ。それとも、イランには全容開示できない“事情”があるのだろうか。
具体的には、核弾頭製造に関連する部品の実験、外国人専門家(ロシア人)から核弾頭製造技術の修得、コンピューターによる模擬試験などだ。その上、首都テヘラン近郊のパルチン軍事基地で鉄鋼製コンテターを撮影した衛星写真を入手したという。
上記の諸情報はIAEAが独自に査察・検証し、収集したものではなく、米英ら西側情報機関から入手したものだ。
ところで、「IAEAはいつから西側情報機関の下請け機関となったのか」、「情報提供国の政治的思惑はどうか」等の疑問が当然、付きまとってくる。
IAEAは核エネルギーの平和利用促進を目的に創設された純粋な核専門機関だ。その機関が西側情報機関から入手した内容を意思決定機関の理事会向け報告書に記述したわけだ。
フセイン・イラク政権時代、大量破壊兵器製造疑惑が契機となって対イラク戦争が始まったが、米情報機関がメデイアに流した移動式大量破壊兵器関連情報はイラク戦争終了後、間違っていたことが判明した。衛星写真も100%、正確に解析できないし、操作も可能だ。
IAEAのイラン報告書は「入手した情報は信頼できる」と判断し、「イランの核計画が軍事目的を追求している可能性が高い」と結論を下したわけだ。それに対し、イランのIAEA担当のソルタニエ大使は早速、「バランスに欠き、専門性もなく、政治的動機に基づくものだ」と強く反発している。
核開発を密かに追及する国はIAEAの査察を潜り抜けるためあらゆる手段を考える。特に、ウラン濃縮関連活動はプルトニウム製造とは違い、移動が可能であり、隠蔽しやすい。そのような中で、「その核計画が平和利用か、軍事目的か」を判断することは非常に難しい。試行錯誤しているうちに、核兵器を製造してしまう懸念も出てくる。イランのケースがそうかもしれない。
IAEAの検証作業は、加盟国から情報提供などの連携を受けなければ難しい。その意味で、IAEAは欧米諸国やイスラエルの情報機関からの情報に依存せざるを得ない“台所事情”があるわけだ。
問題は情報提供国側の信頼性だ。自国で核兵器を保有する一方、他国の核兵器製造を阻止しようとすれば、それは明らかに政治的動機に基づく、といった批判を受けることになる。換言すれば、核拡散防止条約(NPT)の問題点だ。
イスラエルの場合、NPTに加盟せず、約200基の核兵器を保有している。その国が自国の安全が脅かされるという理由からイラク・フセイン政権時代を含め過去、2度、武力行使で潜在的敵国の核関連施設を爆破したのだ。
イスラエルの世界観からすれば正しい行動かもしれないが、国際社会では通用しない。その意味から、IAEAは欧米、イスラエル情報機関から入手したイランの核軍事関連情報を安易には信頼できないはずだ。IAEAは入手した情報を慎重に追認する作業を実施しなければならない。
一方、イランはIAEAの査察要求や関係者へのインタビューなどに積極的に応じて未解明問題の解決を図るべきだ。IAEAの要求を「セーフガード協定外の要求」として拒否し続けていては決して前進できない。核計画の全容を開示してこそ、国際社会はイランの核計画を「平和目的」として認知できるのだ。それとも、イランには全容開示できない“事情”があるのだろうか。