ku071103 イラク出身の中東問題専門家アミール・ベアティ氏はこのほど当方との電話インタビューに応え、イラク駐留米軍の年内完全撤退について、その見解を明らかにした。
 
 ――オバマ米大統領は10月21日、イラク駐留米軍を今年末までに完全に撤退すると表明した。同撤退案をどのように受け止めているか。

 「基本的には歓迎している。イラク駐留米軍の年内撤退は元々オバマ大統領の公約だった。ただし、米軍は軍撤退後も軍事トレーナーをイラクに留めて置くが、何人のトレーナーをどこに、どれだけ、といった詳細な計画は不明だ。イラク国内では米軍撤退を歓迎する一方、その不明な問題点について議論が出ている。明確な点はオバマ大統領の今回の撤退表明はイラクの将来を考えた上で下されたというより、米国内政治への配慮から出てきたものだ。すなわち、国家財政の破綻から軍事費削減を強いられているからだ」

 ――来年度の米大統領選のことか。

 「その通りだ。国内政治の動向をみて決定されたものだ。米国の対イラク戦争も国連の認知を受けて始まったものではない。米国の対イラク戦争自体、国際社会では容認されないものだ。米国は2003年、フセイン政権が大量破壊兵器を保有していると主張して戦争を始めたが、同政権は大量破壊兵器を保有していなかったことが明らかになったことは周知の事だ」

 ――米共和党議員の中には「米軍が撤退すればイラク国内は内戦状況をもたらす」と警告を発している。

 「米軍が来年も引き続き駐留したとしてもイラク国内が一層安定し、テロ事件が減少するという保証はない。政治家の腐敗などが蔓延し、イラクの民主化プロセスは停滞しているからだ。前回の議会選(10年3月)で敗北したマリキ首相が、第一党となったアラウィ元首相が率いる『イラキーヤ』に政権移譲を拒否し、米国の支援を受けて政権を維持したばかりだ。イラク国内の民主化が促進しない限り。米軍が来年駐留したとしても状況に大きな変化はない。ただし、イラクの国防相が31日、『イラクは米軍の駐留を必要としている』と述べている。米軍の年内完全撤退は大統領選に合わした政治的ショーに過ぎず、軍の訓練といった名目で米軍はその後も留まり続ける可能性は濃厚だ」

 ――隣国イランの影響はどうか。

 「米軍駐留云々が問題ではない。イランは既にイラク国内でその影響力を行使している」

 ――最後に、“アラブの春”のイラク民主化への影響はどうか。

 「民主化は外国から輸入できるものではない。“アラブの春”の初期、イラク国内でも一時期、民主化運動が起きたが、政府は彼らを沈静化させた。イラク戦争後、イラクでは偽民主化が進められてきた。しかし、民族、宗教、部族などで分裂している国で民主化を進めることは難しい。実際、イラク現政権は世界で最も腐敗している国家だろう。機能できる国家体制、機関は依然、確立されていない。イラクが米国とイラン両国の国益代理戦争の場となっている限り、バグダッドの民主化は期待できない。裕福な国民や知識人たちは既に国外に脱出している。国内に留まっている国民は脱出できない人々だけだ」



【短信】中国の胡錦涛国家主席の公式訪問

 中国の胡錦涛国家主席は30日夜、オーストリアを公式訪問のためウィーン国際空港に到着、翌日31日午前、ウィーンのホーフブルク宮殿の中庭でフィッシャー大統領らの歓迎を受けた。その後、ファイマン首相ら政府関係者と会談した。
 31日夜にはザルツブルクに移動し、1日はヴォルフガング湖を船見学、モーツアルトの生誕地ハウスでコンサートなどの観光スケジュールが入っている。
 2日朝には20カ国・地域(G20)首脳会議に出席するため開催地フランスのカンヌに向かう。
 なお、胡主席に随伴してきた約150人の中国経済使節団は31日午後、経済商工会議所でオーストリアの375社と商談した(両国は2016年までに貿易総額を現在の82億ユーロから倍化することを目標)。
 中国国家元首を迎えた音楽の都ウィーンでは数日前から市内の治安警備が強化され、テロリストの襲撃に備え、50人余りの狙撃専門家が宿泊地「インペリア・ホテル」周辺を警備している。
 なお、胡主席の公式スケジュールがスタートする直前、約70人のチベット人が30日夜、ウィーンの国立歌劇場前で中国当局のチベット宗教への弾圧に抗議するデモ集会を開いた。ちなみに、今年に入ってから、チベットでは10人の僧侶が「宗教の自由」などを訴えて焼身自殺を図っている。