42年間の独裁政権を維持し、多くの国民を苦しめてきたリビアのカダフィ大佐は20日、最後の拠点だった中部シルテで反政権派によって拘束され、その直後、死亡が確認されたという。
 同大佐は「自分は亡命しない」と最後まで抵抗する覚悟を表明してきた。その大佐は狭く汚い下水溝に隠れ、自分を見つけた民兵に対して「撃つな、撃つな」と叫んだという。
 過去、多くの独裁者がいたが、その最後が悲惨だったケースは少なくない。カダフィ大佐の死は独裁者の運命を改めて確認させたわけだ。
 カダフィ大佐の死は北朝鮮の独裁者金正日労働党総書記にも大きな衝撃を与えるだろう、という解説記事が既にみられる。その衝撃度は外からは計り知れないが、金総書記にショックを与えたことは間違いないだろう。
 金総書記の父親・故金日成主席は1989年12月、24年以上、独裁者として君臨していたルーマニアのチャウシェスク大統領(当時)がエレナ夫人と共に特別軍事法廷で死刑を宣告され、処刑されたシーンを観て、ショックを受けたという。それから4年後の94年7月、金主席は心臓発作で急死した。
 金総書記は今回、親北派のカダフィ大佐の死を知り、父親が感じたであろう衝撃を味わっているかもしれない(「ウィーンとカダフィ大佐の息子」2011年2月23日、「『独裁者の息子たち』の行方」11年9月6日参考)。
 数十万人の国民を政治収容所に送り、無数の人間を公開処刑し、大多数の国民を飢餓に苦しめてきた金ファミリーの場合、国民のファミリーに対する怒り、憎しみはカダフィ大佐に対するリビア国民のそれを大きく上回っているかもしれない。
 金総書記と後継者金正恩氏は不穏な勢力の鎮圧に乗り出す一方、国民監視を強化しているという情報が流れている。すなわち、金政権は「Xデー」の足音を既に感じ、恐れ戦いているわけだ。
 朝鮮半島の平和な再統一を願う者にとって、金政権の崩壊とその前後の混乱を最小限度に抑えるためにも、準備を整えておかなければならない。
 カダフィ大佐が死去したことで、リビアは本格的な民主体制の構築に乗り出すが、中東問題専門家のアミール・ベアティ氏は「族長社会のリビアで民主主義を構築する作業はチュニジアやエジプト以上に難しいだろう。その上、政治・経済・司法各分野の専門家が少ないことも大きな問題だ」と予想している。
 カダフィ大佐後のリビアの行方は、金政権の崩壊後の北の動向を予測する上で参考になるだろう。