欧州連合(EU)本部のあるベルギーのブリュッセルで23日、ユーロ圏首脳会議が開催されるが、その直後(26日から28日)、同じくブリュッセルで欧州ローマ・カトリック教会司教委員会(ComECE)の秋季会合が開かれる。両者とも主要テーマは金融・財政危機への対応だ。
 前者のユーロ首脳会議では、欧州金融安定ファシリティ(EFSF)の融資能力の拡大と大量の国債を抱える銀行の資本強化などが話し合われる。
 一方、ComECEの報道向け声明文によれば、秋季会合では現行の財政危機の経済的、政治的原因、危機対応策の是非などについて協議するという。会合期間中、司教団はEU政治的機関、欧州理事会のヘルマン・ファン・ロンパウ議長(大統領)との会談も予定されている。
 ComECEはEU諸国の23の司教会議代表団から構成されている。通常の秋季会合では欧州教会の現状が主要テーマだが、今回の会合ではEU委員会ギリシャ問題タスク・フォース責任者、国際通貨基金(IMF)欧州代表、フランス金融監査局議長ら財政問題の専門家たちを基調演説者として招き、財政危機下にある欧州の金融情勢への理解を深める意向だ。
 米ニューヨークの金融街で始まった「反ウォール街デモ」は15日、世界82カ国、951の都市でデモが拡大した。EUの盟主ドイツでも50都市で約4万人の国民が結集。イタリアのローマではデモ隊と治安部隊が衝突し、70人が負傷した。
 金融・財政危機問題はもはや一部の政治家たちが取り組む課題ではなくなってきた。普通の国民にも大きな影響を及ぼしてきたからだ。
 宗教指導者たちは喧騒な日常生活から距離を置き、「聖書の世界」に閉じ籠もり、聖堂で礼拝していれば良かった時代は過ぎた。平信者たちは路上デモに参加し、日々の肉の糧の保証を求めている。方向性を失い、放浪する羊たち(平信者)を見捨てる羊飼い(聖職者)はいないはずだ。
 宗教指導者たちも街に飛び出さなければならない。もちろん、デモ行進に加わることを求めているのではない。未来に不安と焦燥感に囚われる大多数の平信者たちの悩みを聞き、それを共有しながら、牧会すべきだ。
 ユーロ首脳会談では財政危機に対する具体的な政策が話しわれるから、欧州の司教秋季会合では、物質的享楽が人生の最高の目的のように受け取られてきた現代社会に生きる平信者たちに、「神と共に生きる人生」の価値を改めて想起させなければならない(「反ウォール街デモが提示した問題」2011年10月17日参照)。
 ローマ法王ベネディクト16世は「金融危機は現代人に生き方を再考させる絶好の機会だ」と述べている。宗派の壁を超え、全ての宗教指導者たちは「現代人の霊性の覚醒」を促す絶好の機会を失わないためにも、街に飛び出すべきだ。無神論者グループの「神はいない」運動の叫びが教会の中からも聞こえ出した。時間との戦いである。