ウィーンの国際原子力機関(IAEA)広報部は5日、IAEA査察官を含む3人が4日午後(現地時間)、ベルギー北部デッセル(Dessel)の核廃棄物処理施設を定期査察中、放射能を浴びるという事故が発生したと発表した。
 ベルギー側の報道では、事故現場は封印され、放射能は外部に放出していない。被爆した査察官は放射能の除染措置を受けているという。詳細な事故の状況は不明だ。
 ところで、IAEA査察官が査察活動中に放射能を浴びるケースは今回が初めてではない。1990年代、北朝鮮・寧辺の再処理施設を査察中だったベテラン査察員が放射能を浴びている。
 同査察官(エジプト人)は通算17回、訪朝し、総日数では約1年間、北朝鮮に滞在した経験がある。「IAEAの中で北朝鮮の核問題に最も精通した人物」といわれていた。
 同査察官は事故後、ウィーンで健康診断を受けた。退職後も定期的に検査を受けているという。
 当方は昨年、退職した同査察官に会う機会があったが、「幸い、これまで発病はない」と語っていた。
 同査察官によると、「北の核関連施設の作業員は不十分な安全体制下で仕事を強いられている。IAEA査察官は定期検査を受けるが、北作業員の場合はそのようなケアがない」という。そのため、「北の核関連施設に働く多くの作業員はこれまで放射能を浴びて亡くなっている」という。
 なお、放射能事故ではないが、IAEA査察官(フランス人査察官)が1979年、台湾の核関連施設で査察中、間違って電気回線に触れ、死去したことがある。IAEA査察官が作業中に死去したのは初めのケースだったこともあって、同事故は当時、IAEA関係者に大きな衝撃を与えた(その直後、査察中の事故で死去した場合、その遺族年金を増額するなどの補助制度がIAEA内でも設置されたという)。