ローマ・カトリック教会最高指導者、ローマ法王べネディクト16世は25日夜(現地時間)、4日間のドイツ訪問(司牧)の日程を終えて、ローマに戻った。
 21回目の外遊となったドイツでは6年前の訪問のように国を挙げての大歓迎とはいかなかったが、約500年ぶりのドイツ出身法王は依然、多くの国民の関心を惹き付けた。
 特に、法王が記念礼拝や連邦議会で語った内容は示唆に富むものだった。
 「神が臨在する処に未来はある」をモットーに、欧米社会で席巻する相対主義を批判し、国民や為政者たちに神への信仰を訴える高齢法王(84)の姿は、砂漠で「悔い改めよ」と叫んだ洗礼ヨハネの姿を彷彿させるものがあった。
 べネディクト16世は22日、ベルリンのドイツ連邦議会で法王として初めて演説したが、その内容は国の舵取りをする政治家への法王のメッセージだ。
 以下、その内容の一部を紹介する。

 べネディクト16世は、「多数決原理に基づく民主主義の義がいつも正しいわけではない」と語りだす。挑発的なスタートだ。民主主義の基幹ともいうべき多数決原理に疑問を呈したのだ。連邦議会では約80人の議員たちが法王の演説をボイコットしたが、彼らが聞いていたらきっとブーイングをしていただろう。
 法王は旧約聖書「列王紀上3章」から有名な聖句を引用しながら、ソロモン王の話をする。
 「主は夢でソロモンに現れて、『あなたに何を与えようか。求めなさい』と言われた時、ソロモンは長寿を求めず、富を求めず、自分の敵の命をも求めず、ただ訴えをききわける知恵を求めた」。
 すなわち、ソロモン王は、「善悪を区別できる知恵、ききわける心(ein horendes Herz)を求めた」のだ。 そして、「義のない国家は大きな強盗集団と同じだ」といった中世のカトリック神学者アウグスチヌスの言葉を引用し、国の舵取りをする政治家に「義」の重要さを強調した。
 次に、法王は欧州のアイデンティティに言及した。
 「欧州の文化はエルサレム、アテネ、そしてローマとの出会いから生まれてきた。イスラエル人から神への信仰を、哲学的知性をギリシャ人から、そしてローマ人の法的思考を継承して欧州の内的アイデンティティが形成されていった」と説明する。
 そして最後に、「欧州人は神の前に責任を持って全ての人間の尊厳を守らなければならない。ソロモン王のように、神が何かを与えるといった場合、善悪を識別できる能力、ききわける心を求めるべきだ」と述べた。
 22分間あまりの短い演説だったが、学者法王べネディクト16世の面目躍如の名演説だった。