30日は祝日だ。国連も休みだ。どのような祝日かというと、イスラム教のラマダン明けの祭り(イード・アル・ファトル)だ。犠牲祭(イード・アル・アドバー)と共にイスラム教の2大祝日に当たる。3日間ほど祝うのが通常だ。
 ラマダンはイスラム教徒が堅持しなければならない神聖な義務の1つだ。日の出から日沈まで飲食、喫煙、性生活はできない。日が沈めば、断食明けの食事(Iftar、イフタール)を友人や親戚関係者と一緒に取る。ラマダン期間の大きな楽しみだ。キリスト信者には分らない彼らの“至福の時”だろう。
 その断食が終わった。イスラム教徒によっては異なるが、ラマダンで体重が減って贅肉が取れた者もいる一方、イフタールを十分楽しんだ結果、ラマダン前より太ったイスラム教徒もいる。
 さて、明日から9月に入る。米国内多発テロ事件(9・11テロ事件)から10年目を迎える日が近付いてくる。北米イスラム・サークル(ICNA)は、「ラマダン明けの祝賀を開催する代わりに、米国民との接触を促進するオープン・デーを計画している」という。ICNA代表によると、9・11後、米国内でもイスラムフォビアが席巻し、イスラム教徒もさまざまな中傷や罵声などを受けてきたという。そこでテロ事件10年目の「9・11」をイスラム教を米国民に啓蒙する国民活動日としたいというのだ。
 一方、トルコのエルドアン首相は国内の非イスラム教の少数宗派代表を招いて夕食(イフタール)を開催し、そこで「宗派の所属に関係なく、全ての宗教は対等だ」と述べたという。トルコ首相がキリスト教とユダヤ教の代表を招いたのは今回が初めてだ。
 同国はキリスト教会やユダヤ教など非イスラム教の財産を返還、賠償する公布を下したばかりだ。招かれたユダヤ教の大ラビ、ハレヴァ師はユダヤ教に所属してきた財産の返還公布を「革命的な決定だ」と歓迎している。
 ラマダンの意義と価値について、スーダン出身の知人は、「日頃の物質的な思いから解放され、神と対面できる期間として非常に重要だ。普段だったら直ぐ怒りが飛び出すケースでもラマダン期間だと不思議と平静に対応できる。これもラマダンの影響ではないか」と述べたことを思い出した。ちなみに、ラマダン後、イスラム教国の中には、政治犯を恩赦する国もある。
 ラマダン明け直後のグットニュースを聞きながら、1カ月余り断食したイスラム教徒たちが今後、世界の平和のために積極的に貢献してほしい、と思った次第だ。特に、今年に入ってチュニジア、エジプト、リビア、シリアなど北アフリカ・中東諸国で民主化運動(アラブの春)が進行している時だ。ラマダン明け後のイスラム教徒の言動に注目したい。