オーストリアのオーバーエスタライヒ州ブラウナウ地区の小村で80歳になる父親が2人の娘(現在53歳と45歳)を41年間、監禁し、暴行を繰り返してきたことがこのほど明らかになった。
 オーストリア警察当局は25日、父親を逮捕。2人の娘は心身の健康チェックのために病院に運ばれたという。オーストリアのメディアによると、2人の娘は軽度の精神的障害者だという。母親は3年前に亡くなっている。
 事件が発覚したのは、父親が今年5月、娘を暴行しようとし、抵抗されて倒れ、立ち上がれなくなった隙に、娘が外部に連絡したことで41年間の監禁事件が判明した。
 同国では3年前、同じように父親に24年間、地下牢に監禁され、性虐待を受け、7人の子供を産んだ娘(現在42歳)の監禁事件が明らかになり、世界に衝撃を与えたばかりだ(「娘監禁事件への一考」2008年4月30日参照)。その2年前の06年8月には、18歳の女性が8年間の監禁生活から解放される、という事件があった。
 英国人ジャーナリストは、「小国オーストリアでどうしてこの種の犯罪が頻繁に起きるのだろうか」と首を傾げているほどだ。
 興味を引く事実は、「24年間監禁事件」は二ーダーエスタライヒ州のアムシュテッテン市で発生したが、そこからあまり遠くないマウトハウゼンには世界大戦時、ユダヤ人が監禁されていた強制収容所があった(同収容所では10万人以上のユダヤ人が殺害された)。今回の「41年間監禁事件」の犯行現場はブラウナウ地区(Braunau)だ。アドルフ・ヒトラーが生まれた処だ(ヒトラーは1889年4月20日、ブラウナウ生まれ)。これは単なる偶然だろうか。
 「わが国最悪の犯罪」といわれた「監禁事件」とオーストリアの暗い歴史(ヒトラーとそのナチス政権)との間には何らかの繋がりがあるのだろうか。
 オーストリアのメディアは26日現在、「41年監禁事件」が起きたブラウナウ地区からヒトラーの生誕地を想起した記事は見当たらない。
 同国のジャーナリストは、「外国人記者ならば当然、そのような関連を指摘する記事を書くかもしれないが、オーストリアのメディア関係者はその関連性を知っていても敢えて指摘しないだろう」という。