kimjongyul オーストリア内務省は先日、最新の「憲法擁護報告書」(「Verfassungsschutzbericht」117頁)を公表した。その11章「情報活動と諜報防止」の項で、昨年潜伏先オーストリアで正式に亡命表明した北朝鮮の物品調達人・金正律氏(写真=2010年3月5日、ウィーンで撮影)の件をかなり詳細に報告している。
 当方は「脱北者・金正律氏の決意」(2010年3月5日)の中で同氏を紹介したが、「憲法擁護報告書」によると、金正律氏は潜伏先リンツ市(オーストリア第3の都市)では「日本人」として生活していたという。金氏は昨年3月の記者会見では、その事実を公表していない。
 
 元北朝鮮人民軍陸軍大佐の金正律(Kim Jong Ryul)氏は1935年2月2日生まれ。ドイツ、オーストリアなど欧州各地で故金日成主席、金正日労働党総書記ファミリーへの高級品や武器関連器材などを調達する工作員として働いてきたが、金主席が死去した直後、脱北を決意し、オーストリア国内で潜伏。そして昨年3月4日、欧州での歩みをまとめた著書「Im Dienst des Diktators」(独裁者への奉仕)を発表し、正式に亡命した経緯がある。
 
 金氏は日本語を話す。「NHK衛星放送を通じて学んだ」と答え、工作員としては日本を訪問した事はないと述べてきた。
 「憲法擁護報告書」は「中欧地域で調達活動をしながら資金の一部を貯金し、それでリンツ市内でアパートを借りた。亡命のチャンスが到来したのでスロバキアの首都ブラチスラバから電車でリンツに逃げた。そこでエミールという偽名を使い、隣人や周囲には日本人として生きてきた」と述べている。金氏がオーストリア当局の調査で明らかにしたものだ。
 
 なお、金氏が調達した品目の中には、「放射能測定器、警報装置、金属探知機、騒音測定器、金属遮断機、爆弾探知機、色彩測定器」などが含まれている。
 
 報告書は「金氏が唯一の北の調達人ではないはずだ。世界到る処で同じ様な方法で金ファミリーのために調達活動に暗躍する北工作員がいるはずだ」と指摘している。