独週刊誌フォークス(Focus)が東日本大震災直後に特集した「日本の悲劇」という小冊子を最近、友人から入手した。大震災では2万人以上の日本人が犠牲となったが、同小冊子は、その「最大級の暴力」というべき天災が発生した時、「神はどこに」をテーマに、過去の哲学者、作家、神学者たちの「人間の苦痛」と「神の不在」へのアプローチを紹介している。
ギリシャの哲学者エピクア(Epikur)から始まり、カント、ヴォルテール、ゲーテ、スタンダール、ハイネ、ショーペンハウアー、ニーチェ、カール・ラーナー(カトリック教会聖職者)、バルトハウザー(神学者)らの見解を紹介し、最後に、カトリック神学者ハンス・キュンク氏を登場させている。
ギリシャの哲学者エピクア(紀元前341年〜271年)は、「神は人間の苦しみを救えるか」という命題に対し、「神は人間の苦しみを救いたいのか」「神は救済出来るのか」を問い、「救いたくないのであれば、神は悪意であり、出来ないのでは神は無能だ」と述べ、「神が望み、出来るというならば、そもそも悪はどこから起因するのか」と追求している。紀元前の哲学者が「神の不在と人間の苦痛」をテーマに既に死闘していたことが分る。
最も辛辣な見解は「赤と黒」や「バルムの僧院」などの小説で日本でも有名な仏作家スタンダール(1783年〜1842年)だ。彼は(神が人間の苦痛を救えない事に対し)、「神の唯一の釈明は『自分は存在しない』ということだ」と述べている。
独詩人のハインリヒ・ハイネ(1797年〜1856年)は、「苦しんでいる時も神を信じるが、善意の神ではない。動物虐待者の神だ」と酷評。独哲学者二ーチェ(1844年〜1900年)は神から慈愛と知性を剥ぎ取って、「神は力だ」と主張している。
ポルトガルの首都リスボンで1755年11月1日、マグニチュード8・5から9の巨大地震が発生し、同市だけで3万人から10万人の犠牲者を出し、同国で総数30万人が被災した。文字通り、欧州最大の大震災だった。その結果、欧州全土は経済ばかりか、社会的、文化的にも大きなダメージを受けた(「大震災の文化・思想的挑戦」2011年3月24日参照)。
仏哲学者ヴォルテール(1694年〜1778年)はリスボン大震災の同時代に生きた人間だ。彼は被災者の状況に心を寄せ、「どうして神は人間を苦しめるのか」を問う。「神の沈黙」への苦悩と嘆きだ。
「世界のエトス」提唱者ハンス・キュング教授(1928年〜)は「苦しみの意味」を考え、イエスの十字架とその救済を例に挙げ、「苦しみは必ず救済される」という神への無条件の信頼を強調している。
「マザー・テレサ」と呼ばれ、世界に親しまれていたカトリック教会修道女テレサは貧者の救済に一生を捧げ、ノーベル平和賞(1979年)を受賞、死後は、前ローマ法王ヨハネ・パウロ2世の願いに基づき2003年に列福された。その修道女テレサが生前、書簡の中で、「私はイエスを探すが見出せず、イエスの声を聞きたいが聞けない」「自分の中の神は空だ」「神は自分を望んでいない」といった苦悶を告白し、「孤独で暗闇の中に生きている」と嘆く。
コルカタ(カラカッタ)で死に行く多くの貧者の姿に接し、テレサには、「なぜ、神は彼らを見捨てるのか」「なぜ、全能な神は苦しむ人々を救わないのか」「どうしてこのように病気、貧困、紛争が絶えないのか」等の問い掛けがあったのだろう(「マザー・テレサの苦悩」2007年8月28日参照)。
ギリシャの哲学者エピクア(Epikur)から始まり、カント、ヴォルテール、ゲーテ、スタンダール、ハイネ、ショーペンハウアー、ニーチェ、カール・ラーナー(カトリック教会聖職者)、バルトハウザー(神学者)らの見解を紹介し、最後に、カトリック神学者ハンス・キュンク氏を登場させている。
ギリシャの哲学者エピクア(紀元前341年〜271年)は、「神は人間の苦しみを救えるか」という命題に対し、「神は人間の苦しみを救いたいのか」「神は救済出来るのか」を問い、「救いたくないのであれば、神は悪意であり、出来ないのでは神は無能だ」と述べ、「神が望み、出来るというならば、そもそも悪はどこから起因するのか」と追求している。紀元前の哲学者が「神の不在と人間の苦痛」をテーマに既に死闘していたことが分る。
最も辛辣な見解は「赤と黒」や「バルムの僧院」などの小説で日本でも有名な仏作家スタンダール(1783年〜1842年)だ。彼は(神が人間の苦痛を救えない事に対し)、「神の唯一の釈明は『自分は存在しない』ということだ」と述べている。
独詩人のハインリヒ・ハイネ(1797年〜1856年)は、「苦しんでいる時も神を信じるが、善意の神ではない。動物虐待者の神だ」と酷評。独哲学者二ーチェ(1844年〜1900年)は神から慈愛と知性を剥ぎ取って、「神は力だ」と主張している。
ポルトガルの首都リスボンで1755年11月1日、マグニチュード8・5から9の巨大地震が発生し、同市だけで3万人から10万人の犠牲者を出し、同国で総数30万人が被災した。文字通り、欧州最大の大震災だった。その結果、欧州全土は経済ばかりか、社会的、文化的にも大きなダメージを受けた(「大震災の文化・思想的挑戦」2011年3月24日参照)。
仏哲学者ヴォルテール(1694年〜1778年)はリスボン大震災の同時代に生きた人間だ。彼は被災者の状況に心を寄せ、「どうして神は人間を苦しめるのか」を問う。「神の沈黙」への苦悩と嘆きだ。
「世界のエトス」提唱者ハンス・キュング教授(1928年〜)は「苦しみの意味」を考え、イエスの十字架とその救済を例に挙げ、「苦しみは必ず救済される」という神への無条件の信頼を強調している。
「マザー・テレサ」と呼ばれ、世界に親しまれていたカトリック教会修道女テレサは貧者の救済に一生を捧げ、ノーベル平和賞(1979年)を受賞、死後は、前ローマ法王ヨハネ・パウロ2世の願いに基づき2003年に列福された。その修道女テレサが生前、書簡の中で、「私はイエスを探すが見出せず、イエスの声を聞きたいが聞けない」「自分の中の神は空だ」「神は自分を望んでいない」といった苦悶を告白し、「孤独で暗闇の中に生きている」と嘆く。
コルカタ(カラカッタ)で死に行く多くの貧者の姿に接し、テレサには、「なぜ、神は彼らを見捨てるのか」「なぜ、全能な神は苦しむ人々を救わないのか」「どうしてこのように病気、貧困、紛争が絶えないのか」等の問い掛けがあったのだろう(「マザー・テレサの苦悩」2007年8月28日参照)。