反体制派グループへの無慈悲な武力弾圧を繰り返すシリアのアサド政権に対し、国際社会の批判は日増しに高まってきているが、同政権の崩壊はまだ見えてこない。そこでシリアを取り巻く政治情勢を少し振り返ってみた。
シリアと国境を対峙するトルコは西欧と東洋の架け橋を自認し、国際政治の舞台で一定の役割を演じることを期待、シリアに対しても積極的な調停工作を展開させている。
具体的には、シリア軍の攻撃を逃れてトルコ領土に多数のシリア難民が殺到しているために、アサド大統領に民衆への武力攻撃の即停止を要求している。問題は、シリア難民の多くが同国北部に居住するクルド系住民だ。国内にクルド問題を抱えるトルコとしては、シリア難民の殺到阻止が最大の課題となる。そのためには軍の介入も辞さない、といった厳しい選択を差し迫られているわけだ。
ゴラン高原問題でシリアと対立しているイスラエルはダマスカスとの武力衝突を願っていない。レバノンにはイランの支援を受けるヒズボラ(親イランのシーア派)が控えている。イスラエルにとって、現状維持が最善だ。
シリアは中東アラブ諸国では唯一、親イランだ。同国はイスラム教スン二派が最大宗派(約70%)だが、権力を支配しているのは少数派のアラウィ派(約11%)だ。同派はシーア派を起源として発展してきたグループだ。アサド政権がシーア派国イランの支援を受ける理由が理解できるわけだ。
米国は、民主化に武力弾圧を繰り返すアサド政権に対し、批判を控え、静観してきた。しかし、無抵抗の市民たちを虐殺する場面がテレビで放映され、国際社会の怒りが高まってきたことを受け、米国はアサド政権への批判を開始。クリントン米国務長官はその直後、「国際社会の対シリア制裁を強化すべきだ」と要求している。
ただし、米国はアサド政権崩壊の独自シナリオを持っていない。オバマ政権としてはシリアへの武力介入は最悪のシナリオだ。アサド政権の背後にイランやヒズボラがいる。対シリア武力介入は中東全土を巻き込んだ戦争に発展する危険性が出てくるからだ。
米オバマ政権の本音はアサド政権が反体制派の改革要求の一部でも受け入れ、民主化へ一歩でも前進してくれればそれで十分なのだ。
次に、アサド政権の国内状況をみると、反体制派グループは少数派だ。国際社会の支援が途絶えたならば、存続も厳しい。中東問題専門家アミール・ベアティ氏は「反体制派勢力がアサド政権を今月末から来月初めまで退陣できなければ、アサド政権は生き延びるだろう。シリアではバース党が全権を支配し、国民の大多数がその恩恵を受けている。軍・官僚も同様だ」と指摘する。アサド大統領は依然、バース党と国民を掌握している、というのだ。
以上、アサド政権を取り巻く内外の政情を簡単に振り返った。アサド政権が依然退陣しないのは、(1)イランを含む親シリア派の支援、(2)米国や隣国がアサド政権の退陣を願っていないこと、(3)バース党を中心に国内を依然掌握していること、等の理由が考えられる。
シリアと国境を対峙するトルコは西欧と東洋の架け橋を自認し、国際政治の舞台で一定の役割を演じることを期待、シリアに対しても積極的な調停工作を展開させている。
具体的には、シリア軍の攻撃を逃れてトルコ領土に多数のシリア難民が殺到しているために、アサド大統領に民衆への武力攻撃の即停止を要求している。問題は、シリア難民の多くが同国北部に居住するクルド系住民だ。国内にクルド問題を抱えるトルコとしては、シリア難民の殺到阻止が最大の課題となる。そのためには軍の介入も辞さない、といった厳しい選択を差し迫られているわけだ。
ゴラン高原問題でシリアと対立しているイスラエルはダマスカスとの武力衝突を願っていない。レバノンにはイランの支援を受けるヒズボラ(親イランのシーア派)が控えている。イスラエルにとって、現状維持が最善だ。
シリアは中東アラブ諸国では唯一、親イランだ。同国はイスラム教スン二派が最大宗派(約70%)だが、権力を支配しているのは少数派のアラウィ派(約11%)だ。同派はシーア派を起源として発展してきたグループだ。アサド政権がシーア派国イランの支援を受ける理由が理解できるわけだ。
米国は、民主化に武力弾圧を繰り返すアサド政権に対し、批判を控え、静観してきた。しかし、無抵抗の市民たちを虐殺する場面がテレビで放映され、国際社会の怒りが高まってきたことを受け、米国はアサド政権への批判を開始。クリントン米国務長官はその直後、「国際社会の対シリア制裁を強化すべきだ」と要求している。
ただし、米国はアサド政権崩壊の独自シナリオを持っていない。オバマ政権としてはシリアへの武力介入は最悪のシナリオだ。アサド政権の背後にイランやヒズボラがいる。対シリア武力介入は中東全土を巻き込んだ戦争に発展する危険性が出てくるからだ。
米オバマ政権の本音はアサド政権が反体制派の改革要求の一部でも受け入れ、民主化へ一歩でも前進してくれればそれで十分なのだ。
次に、アサド政権の国内状況をみると、反体制派グループは少数派だ。国際社会の支援が途絶えたならば、存続も厳しい。中東問題専門家アミール・ベアティ氏は「反体制派勢力がアサド政権を今月末から来月初めまで退陣できなければ、アサド政権は生き延びるだろう。シリアではバース党が全権を支配し、国民の大多数がその恩恵を受けている。軍・官僚も同様だ」と指摘する。アサド大統領は依然、バース党と国民を掌握している、というのだ。
以上、アサド政権を取り巻く内外の政情を簡単に振り返った。アサド政権が依然退陣しないのは、(1)イランを含む親シリア派の支援、(2)米国や隣国がアサド政権の退陣を願っていないこと、(3)バース党を中心に国内を依然掌握していること、等の理由が考えられる。