世界の若いミュージシャンが不思議と27歳で死去するケースが多い。彼らにとって「27歳」は厄年に当たり、ロック・スターたちから恐れられてきた。オーストリア日刊紙クローネ記者のフランチスカ・トロスト女史が31日付で「悲しきクラブ『27』メンバー」というタイトルの記事を書いている。
 最近では、英国のソウル歌手エイミー・ワインハウスさん(27)が先月23日、ロンドンの自宅で亡くなった。先日、ユダヤ教の儀式に基づき葬儀が挙行されたばかりだ。2008年にはグラミー賞で5冠を獲得、スーパースターの座を得て、若者たちの間で人気があったが、薬物中毒とアルコール中毒に悩み、今年6月の公演をキャンセルするなど、その言動は不安定さを増していた矢先だ。公式の死因は明らかにされていないが、麻薬中毒死の可能性が濃厚だ。
 ワインハウスさんの助手によると、「27歳の誕生日の時、ダモクレスの剣(注)のように、危険が彼女に近づいてきていた」という。あと2カ月余り生き続ければ良かったが、運命はワインハウスさんに28歳の誕生日を迎えることを許さなかったわけだ(ワインハウスさんは1983年9月14日生まれ、2011年7月23日に亡くなった)。
 クラブ「27」に所属するミュージシャンたちを挙げるとすれば、英ロックバンド、ザ・ローリング・ストーンズの元ギタリスト、ブライアン・ジョーンズ(Brian Jones)だ。彼は1969年7月3日、プールで溺れ死んでいたところを発見された。米ミュージシャンのジミ・ヘンドリックス(Jimi・Hendrix)は70年9月18日、ロンドンのホテルで麻薬中毒死。米ロックシンガー、ジャニス・ジョプリン(Janis Joplin)は70年10月4日、麻薬とアルコールで死んでいる。また、米ロックバンド、ドアーズのボーカリスト、ジム・モリソン(Jim Morrison)は71年7月3日、パリで心臓発作で亡くなったが、死因については最後まで不明な点が残った。彼らは死亡した時、いずれも「27」歳だったのだ。
 トロスト女史によると、クラブ「27」という言葉が生まれる契機となったのは1994年4月5日、米ミュージシャン、カート・コバーン(kurt Cobain)が銃で自殺してからだという。それ以後、“急いで生き、激しく愛し、若くして死んだ”ミュージシャンたちのグループ、クラブ「27」伝説が生まれたというわけだ。
 クラブ「27」に属するロック・スターたちの多くは麻薬とアルコールに溺れている。トロスト女史は、「彼らの音楽は多くの若者たちを喜ばし、感動を与えたが、彼ら自身の救いを求める魂の声は決して傾聴されることがなかった」と述べている。


注・「ダモクレスの剣」
 古代ギリシャ神話の話。剣が髪の毛一本で吊るされている状況で、危険が常に迫っているという故事。