ウィーンに本部を置く包括的核実験禁止条約(CTBT)機関は9月、ニューヨークで条約発効促進会議(通称14条会議)を開く。そこで条約の早期発効をアピールした最終宣言が採択される予定だ。

▲CTBT機関事務局のあるウィーンの国連(2011年7月、撮影)
CTBTの署名開始から今年9月で15年目を迎えるが、条約の発効の見通しは暗い。「核兵器なき世界の実現」を提唱するオバマ大統領の米国で先日、「未臨界核実験」が、昨年と今年2月に実施されたことが明らかになったばかりだ。
CTBT署名国数は7月現在、182カ国だが、条約発効に署名・批准が不可欠の、研究用、発電用の原子炉を保有する国44カ国の内、依然9カ国が署名・批准を終えていない。米国は1996年9月24日、署名したが、クリントン政権下の99年10月、米上院本会議が批准を否決した。その他、中国、インドネシア、パキスタン、インド、エジプト、イラン、イスラエル、そして北朝鮮の8カ国だ。条約14条を堅持する限り、上記の9カ国が署名・批准を完了しないと条約は発効しない。
ところが、ここにきてCTBTの早期発効のために「条約の暫定発効」案が浮上してきている。米国が批准した場合という条件が付くが、例えば、国際社会の異端児、北朝鮮が最後までCTBTの署名・批准を拒否した場合、批准国が協議して、「14条を一時凍結し、条約を暫定発効させる」ことで合意できれば、条約が暫定発効するというものだ。この場合、北朝鮮の批准がなくてもいい。14条の束縛から解放されるのだ。
暫定発効案は「14条の改正」より「現実的で合理的」と受け取られている。条約改正の場合、過去の15年間を再び繰り返す可能性も考えられ、時間がかかる。暫定発効案の場合、米国が批准すれば、条約の発効の道が開かれるのだ。現実的だ。
米国が批准すれば、米国の出方を伺ってきた中国が批准するだろう。イスラム最大国インドネシアの批准は時間の問題だ。イラン、エジプトも動くだろう。インドとパキスタンは既に準オブザーバー国としてCTBT主催の会議には参加してきた。一方が批准すれば他方も批准するだろう。イスラエルも同様だ。問題は予測できない北朝鮮の出方だったが、この暫定発効案ならば平壌の動向に惑わされることはない。北朝鮮抜きで条約は発効できるのだ。
CTBT関係者は、「条約暫定発効案は何カ国が批准しない時に施行できるかは、加盟国の政治的判断にかかっているから、現時点で何カ国までと答えられない」という。だから、北朝鮮とイラン2国が批准しない場合も暫定発効できる、というシナリオも排除できないわけだ。
この暫定発効の前提は先述したように米国の批准だ。オバマ政権が未臨界核実験を通じて核兵器の安全度の検証が実現できれば、批准に反対の共和党も条約賛成にまわる可能性が出てくる。その意味で、未臨界核実験は条約批准にとってプラスの影響を与えるという声も聞かれる。なお、条約発効促進会議には、クリントン米国務長官の出席が期待されているという。
【データー】CTBT機関が公表した統計によると、米国が1945年広島に人類初の原爆を降下させから、1998年までに世界で2053回の核実験が行われた。国別にみると、米国が1032回、旧ソ連715回、フランス210回、英国45回、中国45回、インド4回、パキスタン2回だ。その後、北朝鮮が2回(2006年10月、09年5月)実施している(南アフリカとイスラエル両国の核実験が報告されているが、未確認)。CTBT機関広報部によれば、北の3回目の核実験に備え、地震観測網の他、放射性ガス(希ガス)をキャッチするため、26カ所の放射性ガス観測施設網が敷かれている。

▲CTBT機関事務局のあるウィーンの国連(2011年7月、撮影)
CTBTの署名開始から今年9月で15年目を迎えるが、条約の発効の見通しは暗い。「核兵器なき世界の実現」を提唱するオバマ大統領の米国で先日、「未臨界核実験」が、昨年と今年2月に実施されたことが明らかになったばかりだ。
CTBT署名国数は7月現在、182カ国だが、条約発効に署名・批准が不可欠の、研究用、発電用の原子炉を保有する国44カ国の内、依然9カ国が署名・批准を終えていない。米国は1996年9月24日、署名したが、クリントン政権下の99年10月、米上院本会議が批准を否決した。その他、中国、インドネシア、パキスタン、インド、エジプト、イラン、イスラエル、そして北朝鮮の8カ国だ。条約14条を堅持する限り、上記の9カ国が署名・批准を完了しないと条約は発効しない。
ところが、ここにきてCTBTの早期発効のために「条約の暫定発効」案が浮上してきている。米国が批准した場合という条件が付くが、例えば、国際社会の異端児、北朝鮮が最後までCTBTの署名・批准を拒否した場合、批准国が協議して、「14条を一時凍結し、条約を暫定発効させる」ことで合意できれば、条約が暫定発効するというものだ。この場合、北朝鮮の批准がなくてもいい。14条の束縛から解放されるのだ。
暫定発効案は「14条の改正」より「現実的で合理的」と受け取られている。条約改正の場合、過去の15年間を再び繰り返す可能性も考えられ、時間がかかる。暫定発効案の場合、米国が批准すれば、条約の発効の道が開かれるのだ。現実的だ。
米国が批准すれば、米国の出方を伺ってきた中国が批准するだろう。イスラム最大国インドネシアの批准は時間の問題だ。イラン、エジプトも動くだろう。インドとパキスタンは既に準オブザーバー国としてCTBT主催の会議には参加してきた。一方が批准すれば他方も批准するだろう。イスラエルも同様だ。問題は予測できない北朝鮮の出方だったが、この暫定発効案ならば平壌の動向に惑わされることはない。北朝鮮抜きで条約は発効できるのだ。
CTBT関係者は、「条約暫定発効案は何カ国が批准しない時に施行できるかは、加盟国の政治的判断にかかっているから、現時点で何カ国までと答えられない」という。だから、北朝鮮とイラン2国が批准しない場合も暫定発効できる、というシナリオも排除できないわけだ。
この暫定発効の前提は先述したように米国の批准だ。オバマ政権が未臨界核実験を通じて核兵器の安全度の検証が実現できれば、批准に反対の共和党も条約賛成にまわる可能性が出てくる。その意味で、未臨界核実験は条約批准にとってプラスの影響を与えるという声も聞かれる。なお、条約発効促進会議には、クリントン米国務長官の出席が期待されているという。
【データー】CTBT機関が公表した統計によると、米国が1945年広島に人類初の原爆を降下させから、1998年までに世界で2053回の核実験が行われた。国別にみると、米国が1032回、旧ソ連715回、フランス210回、英国45回、中国45回、インド4回、パキスタン2回だ。その後、北朝鮮が2回(2006年10月、09年5月)実施している(南アフリカとイスラエル両国の核実験が報告されているが、未確認)。CTBT機関広報部によれば、北の3回目の核実験に備え、地震観測網の他、放射性ガス(希ガス)をキャッチするため、26カ所の放射性ガス観測施設網が敷かれている。