国際原子力機関(IAEA)担当のイスラエルのエフド・アゾウライ大使(Ehud AZOULAY)はIAEAの会議場(Mビル)内で待機していた。
 暫くすると、IAEA関係者がきて、直ぐに話し出した。テーマはイランのサレヒ外相(昨年12月就任)と天野之弥事務局長との会談内容だ。
iranischer botschafter イランのサレヒ外相(写真)は12日午前、IAEAのウィーン本部を訪問、天野事務局長と会談したばかりだ。その1時間後、イスラエル大使はIAEA関係者から会談内容のブリーフィング(報告)を受けていたことになる。
 イスラエルはテヘランの核計画に対し非常に神経質となっている。「イランは核兵器を製造する」と分析しているからだ。イランに核兵器を保持させないため、軍事力を行使してテヘランの核関連施設を破壊するだろう、と予想されているほどだ。
 実際、イスラエルは2007年9月、シリア北東部の核関連施設(ダイール・アルゾル施設)を空爆した。イスラエルは同施設を核関連施設と判断したからだ(シリア側は一貫して「核施設ではなく、軍事施設」と反論)。
 天野事務局長は6月の理事会用のイラン報告書(9頁)の中で「イランの不法核開発計画(ミサイル搭載用核弾頭開発活動継続など)の疑い」を指摘し、イスラエルの懸念を一層、裏付けている。IAEA報告書によると、イランは国連安保理決議、理事会決議を無視し、ウラン濃縮関連活動や重水炉関連活動を継続・拡大している。
 ちなみに、サレヒ外相と天野事務局長との会談内容には新しいものがなかった。IAEA広報部によると、イラン側はIAEAとの協調を強化する用意があること、そのための前提条件としてIAEAはイランの不法核開発容疑調査を停止することなどを申し出たという。
 イランの核問題がIAEA理事会の議題となって8年目を迎えたが、同国の核計画の全容は依然、解明されていない。
 イランのIAEA担当ソルタニエ大使は「わが国の核計画は核エネルギーの平和利用が目的だ」と、繰り返し主張しているだけだ。
 イスラエルは忍耐を失いつつある。イスラエル大使の動向をみていると、そのような予感が高まってきた。