1年前だろうか。当方のコラムに一通のコメントが届いた。コラムのテーマは国際原子力機関(IAEA)の査察局長人事についてだった。そのコメント内容が少々、衝撃的だったので今でも鮮明に記憶している。以下、そのコメントを紹介する。

 「もっと面白い事があります。ハイノネン(当時、査察局長兼事務次長)の犬と呼ばれているX氏。ハイノネンの権力を振りかざし、パワハラ・モワハラのし放題・やり放題。IAEAの職員から総スカン。本人は気が付いていないところが、また面白し。ハイノネンが居なくなった後の、X氏に注目して下さい。ボストンまで追いかけて行くのか、古巣の文部科学省に尾っぽを巻いて逃げるのか。もっとも、人格不適切人物として文部科学省から放り出されているので、どうするか? 天野さんも、変な日本人を引き受け大変、巷の噂。日本人の評判ガタ落ち。頑張れ ニッポン」
(コメントでは「X氏」の実名が書かれていたが、ここでは省略した)

 ウィーン国連の花形機関といえば、国際原子力機関(IAEA)だろう。約4500人の国連職員のうち、IAEA職員数は約2200人だ。人数からいっても、世界のメディア機関の注目度からいっても、その存在感はウィーンの国連機関の中で飛びぬけている。
 腐敗と縁故主義の温床となった国連工業開発機関(UNIDO)、署名開始から15年目を迎えたが今なお、条約が発効しない包括的核実験禁止条約(CTBT)機関、文書と宣言に明け暮れる国連薬物犯罪事務所(UNODC)と比較すれば、IAEA職員は少しぐらい鼻を高くしても可笑しくないかもしれない。
 その一方、IAEA職員の中には多くの問題が山積していることも事実だ。地下鉄の電車に飛び込み自殺した職員も過去、いた。上司から評価されず、窓際族になった末、アルコール中毒となったベテラン査察官もいた。
 シリアの核問題で米国寄りの上司と口論した査察官がいた。その上司もアルコール中毒寸前だった。そして上述のコメントのように、日本人職員の日本人上司への批判だ。それも中途半端ではない。
 天野之弥事務局長は時たま、昼食のため職員食堂に顔を出す(エルバラダイ前事務局長は職員食堂で食事をとったことがない)。天野事務局長にとっては、職員との交流を深めたいという目的かもしれないが、多くの職員は「単なるパフォーマンス」と冷たく見ているという。実際、事務局長に声をかける職員はほとんどいない。
 福島原発事故後、IAEAの役割が一層注目され出した。天野事務局長は世界の全原発に対してストレステスト(耐性検査)を実施したい意向だが、IAEA職員内のさまざまな“つぶやき”に対しても時間を割いて検証する必要があるのではないか。自宅で火が燃え上がっているのに、どうして外で消火作業ができるだろうか。