国際オリンピック委員会(IOC)総会が来月6日、南アフリカのダーバン市で開催される。総会では2018年度冬季五輪開催地が決定される。候補地としては、フランスのアヌシー市(同国南東部ローヌ・アルプ地方)、ドイツのミュンヘン市、そして韓国の平昌市の3都市が立候補している。
 下馬評では、今回が3回目の立候補となる韓国の平昌市が「3度目の正直」として開催地の栄光を勝ち取る可能性が高いと受け取られている。
 「平昌市最有力」説の背景について説明する。五輪開催地の誘致選は地域ローテーションという不文律がある。その原則からみると、平昌市は他の2候補地より断然有利だ。冬季五輪が06年トリノ大会(イタリア)、10年バンクーバー大会(カナダ)、そして14年ソチ大会(ロシア)と続くので、「次はアジア地域から」ということになるからだ。ソチ大会後、アヌシー市やミュンヘン市の欧州都市で開催される可能性は限りなく少ないからだ。
 それでは、どうして欧州2都市が立候補しているのか。地域別原則が以前ほど確実でなくなってきたからだ。近代五輪の開催地決定問題は巨額の資金力がものをいう時代に突入してきたのだ。国際スポーツ大会開催の経験が少なく、知名度が低いソチ市が14年冬季大会開催権を獲得し、熱い沙漠の国ドーハ市(カタール)で22年度世界サッカー選手権(W杯)が開催されることになったのもの、その豊かな資金力が決め手となった、といっても過言ではないだろう。
 平昌市は過去、2度、決選投票まで進出したが、もう一歩という段階で惜敗してきた。それだけに、同市民や政府の「今度こそは」という意気込みは他の2都市より強い。政府と国民が一体化して平昌市冬季五輪大会の開催を歓迎している、という点も心強い。
 韓国の李明博大統領は来月2日からアフリカ3国を公式訪問するが、南アで平昌市を応援するためにIOC委員たちに誘致を要請する。バンクーバー五輪フィギュアスケート女子金メダリストのキム・ヨナさんも総会の日には駆けつける予定だ。
 膨大な経済的なインパクトを与える五輪開催地誘致問題だけに、3都市は政界から経済界まで総動員して最後の誘致合戦を展開しているわけだ。
 最後に、日本にとって一つだけ懸念がある。隣国・韓国の平昌市が18年に冬季五輪開催地に決定した場合、20年の夏季五輪開催地に立候補を表明している東京都はほぼチャンスを失うことになる。18年冬季、20年夏季の五輪開催をアジア地域で独占することは五輪開催地域ローテーションからみて「かなり難しい」からだ。