中国の温家宝首相の欧州3国訪問が始まった。24日にハンガリー入りし、25日中に英国に飛び、27日には最後の訪問先ドイツに行く。予想されたことだが、同首相は行く先々で、豊富な外貨準備高(約3兆ドル)を背景に、財政危機に悩む欧州諸国に向け、その経済力を誇示している。
 同首相は25日、欧州連合(EU)議長国ハンガリーの首都ブタペストで開催された中東欧諸国・中国経済フォーラムに参加し、「中国は財政危機下の欧州の国債を購入して、欧州経済を今後とも積極的に支えていく」とエールを送ったばかりだ。
 中国の支援表明に答え、ホスト国ハンガリーの右派政治家、オルバン首相は「中国は短期間で世界経済のリーダーになった」と称賛し、中国企業からの投資に大きな期待を寄せたほどだ。
 ところで、中国要人が欧州を訪問した時、いつも話題となる中国の「人権問題」については、温首相との会談では大きな話題とならなかったようだ。はるばる北京から訪問したゲストに不愉快な思いをさせない、といったホスト国側の気遣いもあったろうが、中国側が温首相の欧州訪問の2日前(22日)、同国の反体制派芸術家・艾未未(アイ・ウェイウェイ)氏(54)を保釈したことが功を奏したのかもしれない。中国の外交は抜け目がない。
 ハンガリーと中国間の経済協議では、中国の開発銀行がハンガリーに10億ユーロの貸付を提供する一方、中国側はハンガリーを西欧諸国への経済進出拠点と位置づけ、ハンガリーと中国両国の貿易総額を2015年までに200億ドル規模に拡大する予定という。ハンガリーのタマス・フェレギ開発相は「中国企業の投資でハンガリーで数千人の雇用が生まれる」と語っている。
 人口1000万人の小国ハンガリーにとって、中国から提供される財政支援は大きい。ハンガリー経済界が中国を経済再生の「ブースター」(Booster)と受け取ったとしても当然かもしれない。オルバン首相などは「中国からの歴史的支援だ」と大喜びだ。ちなみに、オーストリア放送は「中国のお陰でハンガリーはもはや心配がなくなった」というタイトルの記事をそのHPに掲載している。
 財政危機下にある欧州諸国にとって、中国の経済支援は喉から手がでるほど欲しい。中国はそのことを熟知している。一方、中国は欧州諸国との関係を深めることで、米国を牽制できる。その上、欧州の対中国武器禁輸を解除させたい、という狙いもあるはずだ。また、EUの対ギリシャ支援と同様、中国の対欧州財政支援も無条件ではなく、当然、“ヒモ付き融資”であることを忘れてはならないだろう。