「南欧諸国の国民は休暇を減らし、もっと働くべきだ」
メルケル独首相は遂にこのように言い切ってしまったのだ。欧州の盟主ドイツはユーロ経済圏を守るために金財政危機で財政破産寸前に追い込まれているポルトガルやギリシャを救済するため巨額の財政支援を実施しなければならない一方、財政支援を受ける側の国民はドイツ人より長い休暇を楽しみ、早い時期に年金生活に入っている。この現実に対して、メルケル首相は小言の一つでもいいたくなったのだろう。
独首相に怠け者扱いされた南欧の政治家たちは「独首相の発言は事実に反している」と冷静に受け止める一方、独首相の傲慢さを日頃から苦々しく思ってきた南欧政治家たちは「またか」といった表情で不快感を示している。ポルトガルの労組議長などは「独首相は無知だ」(オーストリア日刊紙ザルツブルガー・ナハリヒテン)と反論している、といった有様だ。
ドイツ人は昔から勤勉で規律を重視する国民と思われてきた一方、スペインやポルトガルの南欧の国民は陽気で明るいが勤勉からは程遠く、少々ルーズなところがある、と受け取られてきた。当方を含め多くの日本人もそのような印象をもっていたのではないだろうか。そしてメルケル首相もそのように考えてきたのだろう。
しかし、事実は違う。少なくとも、OECD(経済協力開発機構)の統計によると、事実は逆なのだ。スペイン国民の年間労働時間数は1653時間、ドイツ人のそれは1389時間だ。労働時間数ではスペイン人はドイツ人より圧倒的に多い。平均退職年齢でもスペイン人は62歳8ヶ月である一方、ドイツ人は61歳5ヶ月だ。法的に認められている休暇日数はスペイン人22日間だが、ドイツ人は24日間だ。
OECDの統計を見る限り、南欧の国民はドイツ人より長い時間、働き、少ない休暇で高齢まで働いている、という姿が浮かび上がってくる。メルケル首相の発言内容とは180度、違う。
ところで、独首相を務めるメルケル首相がOECDの統計を知らないはずがないだろう。メルケル首相の小言は統計に基づくものではなく、実感に立脚したものと解釈すべきかもしれない。そして「実感」は「統計」より事実を正確に把握している場合が少なくない。
最後に付け足す。ザルツブルガー・ナハリヒテンは20日、「南欧人、メルケルの小言に怒り」という記事の中でスペイン労組責任者の発言を載せていた。ドイツ人より長い時間働き、休暇も少ないのにどうしてスペイン経済がドイツ経済ように発展できないか、という問いに答えているのだ。曰く「われわれは生産性で問題点を抱えている」。労働時間や有給休暇の長短が問題ではなく、「生産性」の向上が問題というわけだ。
メルケル首相は「もっと働け」と檄を飛ばすより、「もっと効率的に働くべきだ」と諭すべきだったかもしれない。
メルケル独首相は遂にこのように言い切ってしまったのだ。欧州の盟主ドイツはユーロ経済圏を守るために金財政危機で財政破産寸前に追い込まれているポルトガルやギリシャを救済するため巨額の財政支援を実施しなければならない一方、財政支援を受ける側の国民はドイツ人より長い休暇を楽しみ、早い時期に年金生活に入っている。この現実に対して、メルケル首相は小言の一つでもいいたくなったのだろう。
独首相に怠け者扱いされた南欧の政治家たちは「独首相の発言は事実に反している」と冷静に受け止める一方、独首相の傲慢さを日頃から苦々しく思ってきた南欧政治家たちは「またか」といった表情で不快感を示している。ポルトガルの労組議長などは「独首相は無知だ」(オーストリア日刊紙ザルツブルガー・ナハリヒテン)と反論している、といった有様だ。
ドイツ人は昔から勤勉で規律を重視する国民と思われてきた一方、スペインやポルトガルの南欧の国民は陽気で明るいが勤勉からは程遠く、少々ルーズなところがある、と受け取られてきた。当方を含め多くの日本人もそのような印象をもっていたのではないだろうか。そしてメルケル首相もそのように考えてきたのだろう。
しかし、事実は違う。少なくとも、OECD(経済協力開発機構)の統計によると、事実は逆なのだ。スペイン国民の年間労働時間数は1653時間、ドイツ人のそれは1389時間だ。労働時間数ではスペイン人はドイツ人より圧倒的に多い。平均退職年齢でもスペイン人は62歳8ヶ月である一方、ドイツ人は61歳5ヶ月だ。法的に認められている休暇日数はスペイン人22日間だが、ドイツ人は24日間だ。
OECDの統計を見る限り、南欧の国民はドイツ人より長い時間、働き、少ない休暇で高齢まで働いている、という姿が浮かび上がってくる。メルケル首相の発言内容とは180度、違う。
ところで、独首相を務めるメルケル首相がOECDの統計を知らないはずがないだろう。メルケル首相の小言は統計に基づくものではなく、実感に立脚したものと解釈すべきかもしれない。そして「実感」は「統計」より事実を正確に把握している場合が少なくない。
最後に付け足す。ザルツブルガー・ナハリヒテンは20日、「南欧人、メルケルの小言に怒り」という記事の中でスペイン労組責任者の発言を載せていた。ドイツ人より長い時間働き、休暇も少ないのにどうしてスペイン経済がドイツ経済ように発展できないか、という問いに答えているのだ。曰く「われわれは生産性で問題点を抱えている」。労働時間や有給休暇の長短が問題ではなく、「生産性」の向上が問題というわけだ。
メルケル首相は「もっと働け」と檄を飛ばすより、「もっと効率的に働くべきだ」と諭すべきだったかもしれない。