福島原発事故の発生後、原発設計から東電会社側の管理体制まで批判に晒されてきたが、原発の安全性を監視する国際原子力機関(IAEA)はこれまで福島第1原発を含む55基の日本原発の安全性に関する査察を履行してきた。
 日本の原発の査察を担当してきたIAEA元査察官はこのほど当方とのインタビューに応じ、「福島第1原発には過去、5回以上、査察を履行した経験があるが、旧式の原発とは思えないほど、その管理、運営は良好だった。原発の安全性では問題点が無かった」と証言した。
 IAEAが履行する査察には、1)核保障措置協定(セーフガード)に基づくもの、2)「原発の安全性」(Security concern)をチェックするもの―の2通りがある。元査察官が実施した査察は後者に当たる。
 元査察官は「2001年、事前通告無く福島第1原発を査察したことがある。原発作業員も突然、現れた2人の査察官に少し驚いていたが、査察結果は問題なしだった。あれからも数回、福島原発の安全性に関する査察を担当したが、事故に繋がる問題点は見つからなかった」と強調した。
 元査察官によれば、「福島原発はマグニチュード9の巨大な地震でも崩壊しなかったが、それに伴う津波で冷却用の電源などがやられた。福島原発事故は人災というより、自然災害の結果と判断すべきだ」と主張した。
 経済産業省原子力安全・保安院が12日、福島原発事故を「国際原子力事象評価尺度(INES)」の暫定評価で「レベル7」に引き上げたことについて、「同じレベル7でも福島原発事故とチェルノブイリ原発事故とは基本的に異なる。後者では原子炉が爆発して大量の放射能が大気中に放出されたが、前者では水素爆発だけであり、地震発生直後、原子炉は自動停止した」と指摘、「放出された放射線量ではレベル7に該当するが、その被害規模からみても後者では多数の人間が放射能を受けて死亡したが、福島原発事故ではこれまで皆無だ」と述べた。
 福島原発事故後の対応について、「例えば、原発大国のフランスの原発はほぼ全て加圧水型原子炉(PWR)だが、福島第1原発は旧式の沸騰水型原子炉(BWR)だ。日本では55基のうち、約30基の原子炉がBWR、ないしはその改良型であり、残り25基はPWRだと記憶している。事故が発生した時、BWRに精通している米国やドイツの原発関係者に直ぐその対応を聞くべきだったろう。そうすれば、ひょっとしたら水素爆発を回避できたかもしれない。対応の遅れが問題を拡大した面は否定できない」という。
 最後に、「日本の原発水準は高く、その安全性には問題がない。今回の福島原発事故は自然災害によって引き起こされたものだ。事故を教訓として不足な点や問題点を改善していけばいい」と述べた。