仏ストラスブールの欧州人権裁判所(EGMR)の大審議院は18日、公共学校で十字架をかけることを違法とした2009年11月の判決の再審結果を公表し、「公共学校で十字架をかけることは欧州人権憲章第2条1項の教育権に違反しない」との判決を明らかにした。
17人の裁判官の内、15人が1審判決を拒否、2人が支持した。06年7月に始まった「公共学校での十字架問題」の審議はこれで結審となる。
大審議院は判決理由を「学校内の十字架は生徒にキリスト教の教え宣教する目的ではなく、キリスト教国の文化、宗教的アイデンティティの表現に過ぎない」と指摘、「十字架が生徒に悪い影響を及ぼしたという証拠もない」としている。
EGMRは09年11月3日、フィンランド出身のイタリア人女性の訴えを支持し、彼女の2人の息子が通う公共学校内で十字架をかけてはならないと言い渡し、イタリア政府に「道徳的損傷の賠償として女性に5000ユーロ(約57万円)を支払うように」と命じた。
当時の裁判所判決文によると、学校の教室内で十字架をかけることは両親の教育権と子供の宗教の自由を蹂躪するというもの。換言すれば、学校内で十字架をかけることは「欧州人権憲章」と一致せず、国家は公共学校では宗教中立の立場を維持しなければならないとした。
それに対し、イタリア政府は昨年6月、判決を不満として上訴。ローマ・カトリック教会総本山バチカン法王庁も当時、強い抗議を表明。バチカンのロンバルディ報道官は「欧州人権裁判所はイタリアの国内問題に干渉する権利はない。裁判所は欧州のアイデンティティ形成でキリスト教が果たした役割を完全に無視している」と不満を吐露。ドイツのカトリック教会カスパー枢機卿も十字架違法判決直後、「欧州の攻撃的な世俗主義がもたらしたこの判決に、われわれは覚醒しなければならない。われわれの声をもっと積極的に発信しなければならない」と述べ、世俗主義に対し宣戦すべきだと檄を飛ばしている。
大審議院は今回、「十字架は原罪からの救済というキリスト教の教義を象徴したもので、単なる欧州文化のシンボルではない」という09年11月の判決内容に言及せず、「十字架はキリスト教国の歴史、文化、宗教のシンボル」と判断を下し、その神学的領域にはまったく踏み込まなかった。
EGMRが十字架違法判決を覆した事に対し、バチカン法王庁の新福音化推進評議会議長のサルヴァトーレ・フィジケッラ大司教はミラノ日刊紙コリエレ・デラ・セラとのインタビュー(19日)の中で「裁判の判決結果はイタリア創設150周年への最大の贈物だ」と喜びを表明している。
なお、欧州では現在、各地で十字架論争が起きている。例えば、独ノルトライン・ウェストファーレン州でデュッセルドルフ州裁判所のハイナーブレシング長官が「新しい州裁判所建物内ではもはや十字架をかけない」と決定している。ちなみに、ドイツでは1995年、独連邦裁判所が公共建物内の磔刑像(十字架)を違憲と判決している。
【短信】国連職員、日本被災者支援活動を
ウィーンの国連には国際原子力機関(IAEA)、国連工業開発機関、包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)などの本部が入っているが、そこで働く日本人国連職員たちが19日から22日まで東日本を襲った巨大地震・津波の被災者への救援募金活動を行っている。
Cビルのグランド・フロアー、社員食堂内、会議室のMビル内などで昼食時間を利用して支援を呼びかけている。支援してくれた職員には日本人職員たちが作った折り紙の鶴を渡している。
UNIDO職員のO氏によると、「職員の反応はいいです。多くの支援を頂いています」という。集まった支援金は日本赤十字社を通じて被災者に送られることになっている。
17人の裁判官の内、15人が1審判決を拒否、2人が支持した。06年7月に始まった「公共学校での十字架問題」の審議はこれで結審となる。
大審議院は判決理由を「学校内の十字架は生徒にキリスト教の教え宣教する目的ではなく、キリスト教国の文化、宗教的アイデンティティの表現に過ぎない」と指摘、「十字架が生徒に悪い影響を及ぼしたという証拠もない」としている。
EGMRは09年11月3日、フィンランド出身のイタリア人女性の訴えを支持し、彼女の2人の息子が通う公共学校内で十字架をかけてはならないと言い渡し、イタリア政府に「道徳的損傷の賠償として女性に5000ユーロ(約57万円)を支払うように」と命じた。
当時の裁判所判決文によると、学校の教室内で十字架をかけることは両親の教育権と子供の宗教の自由を蹂躪するというもの。換言すれば、学校内で十字架をかけることは「欧州人権憲章」と一致せず、国家は公共学校では宗教中立の立場を維持しなければならないとした。
それに対し、イタリア政府は昨年6月、判決を不満として上訴。ローマ・カトリック教会総本山バチカン法王庁も当時、強い抗議を表明。バチカンのロンバルディ報道官は「欧州人権裁判所はイタリアの国内問題に干渉する権利はない。裁判所は欧州のアイデンティティ形成でキリスト教が果たした役割を完全に無視している」と不満を吐露。ドイツのカトリック教会カスパー枢機卿も十字架違法判決直後、「欧州の攻撃的な世俗主義がもたらしたこの判決に、われわれは覚醒しなければならない。われわれの声をもっと積極的に発信しなければならない」と述べ、世俗主義に対し宣戦すべきだと檄を飛ばしている。
大審議院は今回、「十字架は原罪からの救済というキリスト教の教義を象徴したもので、単なる欧州文化のシンボルではない」という09年11月の判決内容に言及せず、「十字架はキリスト教国の歴史、文化、宗教のシンボル」と判断を下し、その神学的領域にはまったく踏み込まなかった。
EGMRが十字架違法判決を覆した事に対し、バチカン法王庁の新福音化推進評議会議長のサルヴァトーレ・フィジケッラ大司教はミラノ日刊紙コリエレ・デラ・セラとのインタビュー(19日)の中で「裁判の判決結果はイタリア創設150周年への最大の贈物だ」と喜びを表明している。
なお、欧州では現在、各地で十字架論争が起きている。例えば、独ノルトライン・ウェストファーレン州でデュッセルドルフ州裁判所のハイナーブレシング長官が「新しい州裁判所建物内ではもはや十字架をかけない」と決定している。ちなみに、ドイツでは1995年、独連邦裁判所が公共建物内の磔刑像(十字架)を違憲と判決している。
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Cビルのグランド・フロアー、社員食堂内、会議室のMビル内などで昼食時間を利用して支援を呼びかけている。支援してくれた職員には日本人職員たちが作った折り紙の鶴を渡している。
UNIDO職員のO氏によると、「職員の反応はいいです。多くの支援を頂いています」という。集まった支援金は日本赤十字社を通じて被災者に送られることになっている。