イラクから30人のキリスト教徒が17日、同国内のシーア派イスラム教徒の迫害から逃れれるためにウィーンに避難してきた。
 イラクのキリスト者救済計画はオーストリア内務省のマリア・フェクター内相のイニシアティブに基づく。30人はヨルダンのアンマン、シリアのダマスカス経由でバグダッドからウィーンに到着した。彼らは今後、オーストリア国内で教育や統合するための訓練を受けることになる。
 オーストリアのシュビンデルエッガー外相 (Spindelegger)は「迫害されてきたキリスト信者たちに安全な将来の戸が開かれたことは喜ばしい」と述べる一方、「長期的には、キリスト教徒だけではなく、全ての宗教人が迫害なく自由にその信仰を実践できるようにすることがわれわれの目標だ」と語り、第3国が迫害される宗教者を受け入れることは決して真の解決策とはならないと強調、「イラクのキリスト者も自国内でその信仰を実践できるように、オーストリア政府も今後、欧州連合(EU)のレベルで努力していくたい」と述べた。
 同外相は昨年11月、イラク政府に対し「自国内の少数宗派キリスト教徒への迫害に目を瞑っている」として批判したばかりだ。
 戦争前に約85万人いたイラクのキリスト教信者(同国人口約3%に相当)は今日、半分以上が国外に避難し、同国南部ではもはやキリスト教のプレゼンスはなく、首都バグダッドと同国北部にかろうじてキリスト教社会が生きのびているだけだ。
 イラク北部モスルでは2008年3月13日、武装集団に殺害されたカルデア典礼カトリック教会のパウロス・ファライ・ラホ大司教の遺体が見つかっている。
 同国北部キルクークのルイス・サコ大司教は「イラク国内の少数宗派への迫害が継続する今日、キリスト者にとって希望がない。キリスト者は最も容易に犯罪グループの襲撃の対象となる。イラク治安関係者はキリスト者の安全にあまり関心がない。国際社会はイラク政府に圧力を行使して、キリスト者の保護を要求すべきだ」と語っている。
 なお、EU外相会議は21日、ブリュッセルで「宗教の自由」に関する声明文作成について協議するが、それに先立ち、欧州カトリック司教会議(CCEE)は17日、「世界でキリスト者が最も迫害されている。だから、“迫害されるキリスト者”と明記した『宗教の自由』声明文を作成してほしい」と要求している。