北朝鮮国営の朝鮮中央通信社(KCNA)は6日、「金正日労働党総書記の著書『大衆を中心としたわれらの社会主義は滅ばない』がエジプトのアル・アラム商業出版社から小冊子として出版された」と報じた。
 KCNAによれば、金総書記の著書は1991年5月5日に発行されたもので、「社会主義の必然的勝利、コリア式社会主義の連帯と無敵さの秘密、その本質的な特徴」などが記述されているという。
 金総書記の著書出版は今月16日の同総書記69歳誕生日を祝う行事の一つだ。KCNAによれば、世界各地の親北友好協会で金総書記の誕生日を祝う行事や準備委員会が設置されているという。
 ところで、エジプトの出版社が金総書記の著書を出版したと知った時、当方は思わず首を傾げてしまった。「ムバラク大統領の即解任デモ集会で忙しいエジプト国民が金総書記の著書を読む時間が果たしてあるだろうか」と考えたからだ。
 音楽の都ウィーンでも2008年、金総書記の同じ著書が、同市の印刷会社「ジョセフ・ゲバウアー」社から出版されたことがある。誤解を避けるために説明するが、ウィーン市が金総書記の著書を出版したのでもなく、また、総書記の著書に感動したウィーン市民が自費出版したものでもない。駐オーストリアの北朝鮮大使館が当時、創建60周年を記念して友好協会に繋がっている「ゲバウアー社」に再出版を依頼したものだ。
 ただし、北朝鮮では「音楽の都ウィーンでも金総書記の著書が出版され、愛読されている」というふうに伝えられるはずだ。国内向けのプロパガンダである。
 ウィーンの北朝鮮外交官は昔、オーストリアの大衆紙「クローネン」紙に宣伝広告を出し、その広告欄を読んでいるウィーン市民の姿を写真に撮って、「ウィーン市民も愛する金日成主席(当時)」という見出しを付けて本国に報告したことがある。
 もちろん、金総書記の著書は通常の本屋では見つけられないし、アマゾンを通じて注文することもできない。同総書記の著書は祝賀会に参加したゲストたちにプレゼントするために、大使館の玄関脇に積まれているからだ。
 それにしても、北朝鮮はなんと不合理で非経済的なことばかりにエネルギーを投入する国だろうか。国民が飢え、苦しんでいる時、金総書記の著書を読む国民はいないように、国の命運をかけ民主改革を進めているエジプトの国民の中で世界最悪の独裁者と呼ばれる金総書記の著書を読む人間がいるだろうか。
  なお、知人の北外交官によると、KCNAを含む北の国営メディアはエジプトの民主化運動についてはこれまで何も報じていないという。