知人の北朝鮮外交官に先日、同国最高指導者・金正日労働党総書記の69歳誕生日(2月16日)祝賀会について聞くと、「例年と同じ程度の祝賀会となるだろう。特別なイベントは計画していない」という。同国の朝鮮中央通信社(KCNA)は、世界各地で親北朝鮮友好協会が祝賀会の準備委員会を設置していると報じている。
 来年2012年は故金日成主席生誕100年だけではなく、金総書記の70歳の誕生日の年に当たる。その意味で今年はその予行練習といった程度で派手な祝賀会はないというわけだ。
 知人の北外交官は「金総書記の健康には問題がない。平壌のニュースで金総書記が視察しているところが映っていた。総書記は健康だったよ」という。
 「国内経済の停滞、食糧不足などで国内の事情は昨年以上に厳しいうえ、国際社会の対北制裁は続いている。特に、韓国との関係は険悪だ」と述べると、知人は「まあ、来月11日開催予定の南北軍事予備協議が大きな転換点となるのではないかね」と含みのある言い方をした。
 「しかし、韓国側は関係正常化の最低条件として哨戒艦『天安』爆破事件(昨年3月)や延坪島砲撃(同年11月)に対して北側の真摯な謝罪表明を求めてくるはずだ」と説明すると、知人は少し笑いながら、「わが国が絶対謝罪しないとみるのは間違いだ。謝罪することだって考えられるよ」と述べた上で、「必要ならばね」と付け加えた。
 すなわち、北は韓国と関係改善を果たし、経済支援を得るために謝罪する用意があるというのだ。ただし、知人の北外交官は「金総書記が謝罪する」とは言っていない。「天安艦爆破事件も延坪島砲撃事件も金正日労働党総書記の責任ではなく、人民軍の一部幹部の責任という形で謝罪する可能性がある」というのだ。
 ちょうど、小泉純一郎首相の訪朝時(02年)、金総書記が日本人拉致事件の責任を「特殊工作員の責任」として間接的に謝罪表明をすることで日本から経済支援という実利を狙ったようにだ。
 なお、同外交官は「前回も話したが、わが国は日本との対話を期待している。その立場は過去も現在も変らないが、日本側は過去、わが国との会話を一方的に拒否してきた」と述べた。
 そこで「日朝両国間で非公式の接触はないのですか」と聞くと、「自分の知る限りではないはずだ。昔は中国の北京で両国代表が非公式に接触することもあったが、その中国チャンネルが始動しているとは聞かない」という。