独与党「キリスト教民主同盟」(CDU)の著名な8人の政治家が21日、ベルリンで「カトリック教会の司教たちは既婚聖職者の聖職を認め、聖職者の独身制を廃止すべきだ。聖職者不足で日曜日も礼拝が行われない教会が数多くある」と指摘し、司教たちは独身制の廃止をローマに要求すべきだと述べ、「必要ならば、独教会のために例外条項を確立すべきだ」と明記した声明文を公表し、教会内外で大きな波紋を呼んでいる。
 8人の政治家はいずれも独カトリック教会中央委員会(ZdK)所属メンバーだ。ノルベルト・ラマート連邦議会議長からベルンハルト・フォーゲル元ラインラント=プファルツ州首相、エルヴィン・トイフェル元バーデン=ヴュルテンベルク州首相、ディーター・アルトハウス元テューリンゲン首相、アネッテ・シャヴァーン教育研究相、ヘルマン・キュス連邦議会議員、ノルトライン・ウェストファーレン州のトーマス・シュテルンベルク議員。そして、元ZdK事務局長のフリードリッヒ・クローネンベルク氏だ。CDU内の重鎮たちだ。
 8人の著名な政治家たちは「1972年から75年に開催された独教会会議で『聖職者不足が深刻化した段階で既婚聖職者や独身制問題について再度話し合う』と決定している」と指摘、「今がその時だ」という。
 それに対し、独司教会議は22日、「聖職者の独身制廃止問題は世界教会レベルで協議すべきテーマだ」と強調し、「ローマ法王べネディクト16世のドイツ訪問(2011年9月22〜25日)を控え、(独身制廃止を)テーマ化すべきではない」と主張し、CDUの政治家たちの要求を拒否している。
 欧州のカトリック教会で聖職者の未成年者への性的虐待問題が発覚して以来、教会内外で「聖職者の強制独身制が不祥事の原因だ」といった声が聞こえる。ちなみに、フライブルクの社会学者ミヒァエル・エベルツ氏は21日、「ドイツで昨年、20万人から25万人のカトリック信者たちが教会から脱会した。前年度比で80%増だ」との調査結果を公表したばかりだ。
 バチカンのタルチジオ・ベルトーネ国務省長官は昨年、スペインのTVとのインタビューの中で「聖職者の独身制は有意義であり、実り豊かな教会の伝統だ」と独身制を評価する一方、「独身制も決してタブー・テーマではない」と述べ、独身制の再考の余地を示唆したほどだ。
 ただし、バチカンの公式見解は「聖職者の性犯罪問題とその独身制とは関係がない」という立場だ。ちなみに、ベネディクト16世は07年3月13日には世界のカトリック信者に向けて「愛のサクラメント」と呼ばれる法王文書を公表し、その中で「神父に叙階された聖職者はキリストと完全に同じでなければならない。独身制は言い表せないほどの価値ある財産だ」と独身制を弁護したが、「聖職者の独身制は教理ではない」と認めている。
 ちなみに、キリスト教史を振り返ると、1651年のオスナブリュクの公会議の報告の中で、当時の聖職者たちは特定の女性と内縁関係を結んでいたことが明らかになっている。カトリック教会の現行の独身制は1139年の第2ラテラン公会議に遡る。聖職者に子供が生まれれば、遺産相続問題が生じる。それを回避し、教会の財産を保護する経済的理由が(聖職者の独身制の)背景にあった、といわれる。
 なお、ローマ・カトリック教会の神父が結婚などを理由に聖職を断念した数は1964年から2004年の40年間で約7万人と推定されている。