ローマ・カトリック教会総本山、バチカン法王庁が「聖母マリの再臨」現象やそれに伴う「奇跡」に対して非常に慎重な立場を取っていることは良く知られているが、身内の前ローマ法王ヨハネ・パウロ2世の列福に「奇跡」の認定が必要となると、かなり気前良く、それも迅速に認定するものだ。
 バチカンは先日、前ローマ法王、ヨハネ・パウロ2世の列福式を5月1日、ローマで挙行すると発表したばかりだ。ポーランド出身のローマ法王の福者の道が開かれたわけだが、その直接の恩人はフランスのマリー・サイモン・ピエール修道女の「奇跡」の証だった。
 彼女は2001年以来、ヨハネ・パウロ2世と同様、パーキンソン症候で手や体の震えに悩まされてきたが、05年6月2日夜、亡くなったヨハネ・パウロ2世のことを考えながら祈っていると、「説明できない理由から、手の震えなどが瞬間に癒された」というのだ。バチカンの列聖庁の要請を受けて医事委員会が過去、2回、仏修道女の「奇跡」を調査した結果、「奇跡は事実だ」と認定されたというのだ。
 それを受け、ヨハネ・パウロ2世の後任、べネディクト16世は同修道女の「奇跡」がヨハネ・パウロ2世の仲裁のもとで起きたと公認し、同2世の列福にゴー・サインを出した(ローマ・カトリック教会では列福を受けるためにはその人物が関与した奇跡の証が不可欠だ)。
 ちなみに、時間をかけて病気が癒された、という場合は「奇跡」と認定されない。「奇跡」はあくまでも瞬間に発生した現象でなければならない。

 17日の記者会見での同修道女の証を紹介しよう。
 「05年6月2日の夜以来、もはや薬を飲む必要がなくなったのです。治療も必要でなくなりました。その夜以降、これまでの判読できないような文字ではなく、通常の文字を書くことができるようになりました」
 仏南東部のエクサンプロバンス地方のクリストファー・デュフォア大司教(Christophe Dufour)は「彼女の上に奇跡が起きたことは疑いがない」と強調。仏カトリック教会司教会議のバルナルト・ポドヴィン議長は「前法王も同修道女と同じ病気で苦しんできた」と指摘し、両者間で通じ合う世界があったのだろうと分析している。
 なお、5月1日の列福式後、故ヨハネ・パウロ2世は「福者」となる。その後、いよいよ「聖人」への道がスタートする。ただし、列聖プロセスをクリアするためにはもう一件の「奇跡」の証が必要となる。果たして、どのような「奇跡」がバチカンに報告されるだろうか。