北朝鮮国営の朝鮮中央通信社(KCNA)は19日、金正日労働党総書記が平壌の中央動物園を訪問したと報じた。動物園訪問の直接の契機は、最近、動物園前に建立された故金日成主席の記念碑を視察するためだ。
 同総書記は動物園の歴史に言及し、「動物園は金主席の人民への暖かい愛の賜物だ。人民のために生涯を捧げた主席はわが国の歴史の中で久しく輝いている」と父親を称賛。その後、動物園内を視察し、その行き届いたマネージメントに満足を表明、動物園の発展のために今後とも協力していく意向を明らかにした。
 KCNAが金総書記の動物園訪問を報じた日、ワシントンでは米中首脳会談が開催され、そこで北朝鮮の問題についてオバマ大統領と中国の胡錦濤国家主席が突っ込んだ話し合いをしていた。その時、北朝鮮の最高指導者は動物園を視察し、動物たちと戯れていた、と分れば、オバマ大統領や胡主席は少々ガッカリするかもしれない。
 KCNAが金総書記の動物園視察を報じたのは今回が初めてではない。KCNAは2008年12月1日も「金総書記が中央動物園を視察した」と報じている。「金総書記は手術後にもかかわらず、軍兵舎や国営企業の工場視察ばかりか、動物園まで足を伸ばした」と伝えた。
 ところで、最近も韓国メディアから「金総書記の健康悪化」説が流れている。そのような時、KCNAは金総書記の中央動物園視察を報じたのだ。単なる偶然だろうか、緻密な計算の上で報じられたニュースだろうか。それとも、金総書記は本当に動物が好きで、年に数回動物たちの顔を見ないと落ち着かない、というのだろうか。
 ちなみに、「政治家と動物たち」の関係を想起して欲しい。歴代の米大統領は必ず愛犬をホワイトハウスで飼う。オバマ大統領は就任前、「自分のような雑種の犬を娘のために飼いたい」と述べている。また、ロシアのプーチン首相は最近、ブルガリア首相から犬を贈られている。政治家にとって、鯉を抱えたり、パイナップルの木の下に立つより、動物たちと戯れているシーンが最も「絵」になる。政治家たちはそのことを良く知っている。
 当方はこの欄で「金総書記の愛する動物たち」(2008年12月3日)というコラムを書いたが、そこで「金総書記がどの動物を好きなのかをKCNAの記事は何も言及していない」と不満を呈した。当方の願いにもかかわらず、KCNAは今回も何も言及していない。
 ひょっとしたら、金総書記はワシントンの米中首脳会談を茶化すため、その日にわざわざ動物園訪問を報じさせたのだろうか。