“空飛ぶ法王”と呼ばれ、世界から愛された故ヨハネ・パウロ2世(在位1978年〜2005年)の列福式(福者)が今年5月1日に実施される予定だ。
 それに先立ち、バチカン法王庁内の列聖省関係者は11日、「ヨハネ・パウロ2世の列副にもはや困難はなくなった」と表明している。
 ベネディクト16世は、2005年5月13日にヨハネ・パウロ2世の列福調査の準備を始め、翌月28日に調査を開始した。通常、列福調査の開始は死後5年が経過していなければならない。故ヨハネ・パウロ2世の場合は特例だった。
 07年4月2日、出身教会のポーランドのクラクフでの調査が終了し、資料がバチカンの列聖省へ送付された。列聖省によれば、ヨハネ・パウロ2世はその段階で「神のしもべ」(尊者)の位にある。
 ところで、09年に入ると同2世の列副プロセスが停滞した。列副には「奇跡」の証が必要だ。パーキンソン病に悩まされてきたフランス人修道女が「ヨハネ・パウロ2世のことを思って祈っていたら、病が癒された」という「奇跡」を報告したが、「その証は疑わしい」といった声が飛び出してきた。そこで、関連の医事委員会、神学委員会などが調査に乗り出し、結局は「奇跡の証は事実」と認定されたばかりだ。
 「奇跡」の認定が終わると、新たな困難が昨年、生じてきた。当方は「ヨハネ・パウロ2世の『問題』」(10年4月29日)で「パウロ2世は1970年代、80年、90年代に多発した聖職者の性犯罪に対してその事実を隠蔽してきた疑いがある」との報道を紹介した。
 具体的には、、同2世が04年11月、修道会「キリスト軍団」の創設者であり、未成年者へ性的虐待を繰り返してきた疑いがもたれたメキシコ出身のマルシャル・マシエル・デゴラード神父とローマで会見し、祝福した。同神父の性的虐待問題はバチカン側に既に報告されていたが、ヨハネ・パウロ2世は当時、それを無視したというのだ。
 これが事実とすれば、列副どころではなくなる。バチカン関係者は即対応に乗り出し、結局、「ヨハネ・パウロ2世はデゴラード神父の未成年者への性的虐待問題を知らされていなかった」という説明で同2世の隠蔽容疑を一蹴した。
 これでヨハネ・パウロ2世の福者への道は開かれたわけだ。バチカン法王庁によれば、同2世の列福式は今年5月1日、ローマで挙行される。
 なお、前法王ヨハネ・パウロ2世には、「聖人へのプロセス」(列聖)が待っている。