アフリカ大陸最大の領土を誇るスーダンで9日、南部スーダンの独立を問う住民投票が始まったが、南部スーダンの独立は確実と予想されている。アフリカ大陸の54番目の国家誕生となる。
 米国はキリスト教住民が多数を占める南部スーダンの独立を支援してきたことは周知の事だ。その背後には、原油資源の利権問題があることも明らかだ。それに対し、イスラム系住民が多数を占めるハルツームの北部は南部独立後は米国の政治圧力をかわすために中国へ一層傾斜することが予想される。すなわち、南北スーダンは今後、民族紛争の再発ではなく、米中の資源外交の紛争舞台となる可能性が考えられるわけだ。
 欧米諸国のメディアでは南部スーダンの独立に理解を示す論調が支配的だ。多数を占めるイスラム教国スーダン当局から久しく弾圧や疎外を受けてきた南部住民の立場を考えれば、「北部スーダンから解放され、南部スーダンの独立を獲得することは住民の悲願だ」という主張は十分、理解できる。
 冷戦後、旧ソ連邦に管理されてきた旧東欧諸国が次々と独立していった時、欧米メディアはその独立に喝采を送ったものだ。
 しかし、誤解を恐れずにいえば、新たな「独立国家」の誕生は本当に祝賀すべきことだろうか。
 旧ユーゴスラビア連邦のモンテネグロ共和国が独立し、国連加盟国となった直後、ウィーンの国連でもその国歌掲揚式が行われた。風に揺れる新たな国旗を仰ぎ見ながら、「また一つ、国旗が増えた」といった現実と、「独立国家が増えたことで世界は一歩でも平和に前進しただろうか」といった思いが込み上げてきたことを今でも鮮明に思い出す。
 欧州連合(EU)が「欧州の再統合」に向け拡大を進めている一方、世界では多数の小国家が誕生している。「再統合」と「分割」が同時進行している。もう少し説明すれば、独立した多くの旧東欧諸国や旧ユーゴ連邦諸国は今日、EU加盟国か、その候補国となっている。独立した国家は、新たな統合に参画する道を模索しているわけだ。
 独立国家の誕生は決して即、世界の平和への“朗報”を意味しない、という現実がある。平和な世界の実現のためには、多様性を内包した統合された世界を建設していかなけれなならないはずだ。南部スーダンの独立は、北部スーダンとの再統合も含め、「アフリカの統合プロセス」への一歩と受け取るべきだろう。
 われわれは朝鮮半島の「分断の悲劇」を目撃してきた。北朝鮮と韓国の再統一問題は東アジア地域の平和実現のためには絶対にクリアしなければならない課題となって横たわっている。
 スーダンの南部住民が「独立」を祈願しているように、分断を味わってきた(朝鮮半島の)南北両国国民は今、「再統一」を願っている。